キラキラ エフェクトがかかった幼なじみに過剰反応して俺の身体はもう限界

 「葉琉ーーー!!!」

 数日後、登校すると真っ先に友人の矢野が葉琉に抱き着いてきた。

 「なんだよ。鬱陶しいな」

 葉琉は眉根を寄せて矢野を引きはがそうとしている。

 「聞いたぞ。詩織ちゃんに振られたんだって?」
 「なんで知ってんだよ……あ、美咲ちゃんか?」
 「よし!今日は葉琉を慰めるためにみんなでカラオケに行こうぜ!」
 「行かねーよ。疲れてるから休みたいの」
 「遠慮すんなって。放課後、駅前のカラオケ集合な」

 そう言って矢野は葉琉から離れていった。

 「葉琉、行きにくかったら俺から矢野に断っとくよ?」
 
 失恋したばかりでカラオケに行く気分にはならないだろうと葉琉に声をかける。

 「ん~~やっぱ行くわ。気分転換になりそうだし?」

 少し充血した目を細めて力なく笑う。やっぱり痛々しくて見てられない。

 「葉琉が行きたいならいいけど……」
 「蒼真まで暗い顔すんなよ~せっかくだから楽しもうぜ。なに歌おっかな~」

 俺のことなんか気にしなくていいのに、葉琉は笑って俺の背中をバシバシ叩いた。無理してなきゃいいけど。

 ◇◇◇◇

 放課後、三人で駅前のカラオケに行き、流行りの曲や盛り上がる曲、葉琉の好きなバンドの曲などを歌っているとあっという間に一時間経過してしまった。俺の心配をよそに、葉琉はけっこう楽しんでいて矢野と肩を組んだりタンバリンを叩きまくったりして、いつものようにノリノリだった。

 「で、本題なんだけどーー」

 矢野が急に真剣な顔をしてマイクをテーブルの上に置いた。

 「あんなに仲良かったのに、なんで振られたわけ?」

 矢野のド直球な質問に俺は慌てて割って入る。

 「矢野、今日はそういうのはいいだろ」
 「よくねーよ。三人連続で振られてんだろ?葉琉になんか原因があるんじゃねーの?」
 
 矢野は高校からのつき合いだけど葉琉の恋愛遍歴をよく知っている。彼女を欲しがっていた矢野は、交際経験のある葉琉に色々と相談していた。その時に矢野が参考に聞かせてほしいと手を合わせてお願いしてきたので、葉琉は今までの恋愛のことを矢野に話したのだ。

 「葉琉のせいじゃない。これは、俺らにはわかんない二人の話だから」

 ただでさえ傷付いている葉琉を追い詰めるような言い方をする矢野に腹が立ち、おもわず声を上げてしまった。そんな俺の様子に、矢野は少し驚いて目を丸くしている。

 「……うん。矢野の言う通り、俺のせいだと思う」
 「葉琉?」

 静かに話し始めた葉琉を心配そうにみていたら、目を合わせて頷いてくれた。

 「俺、今まで三人とつき合ってきたけど、正直、恋愛のときめきとかよくわかんないんだよね」
 「マジか……」
 「矢野にアドバイスとかしてたのに、ごめん……」
 
 葉琉は申し訳なさそうに眉を下げて矢野に謝った。

 「いや、俺に美咲ちゃんというステキな彼女ができたのは葉琉のおかげだ。だから俺、葉琉に恩返しがしたいって思ってたんだ」

 スッと立ち上がると、オッホンと咳払いをしてマイクを構える。

 「俺が葉琉に、恋愛の素晴らしさを教えてやる!」

 ビシッと葉琉を指さし、マイクを通して宣言した。俺と葉琉は顔を見合わせてため息をついた。

 「おいおい!この中で唯一の彼女もちは俺だ。交際経験は少ないけど、恋愛経験はめちゃくちゃある!」
 「美咲ちゃん以外、全部片想いでおわってるじゃん」

 俺がしれっとつっこむと、矢野はドスッとソファーに座り、ごくごくとコーラを流し込んだ。

 「片想いの数だけ、恋愛のときめきもそれなりに経験してんだよ」
 「……まぁ確かに。いろんな人にときめいてるもんな?」
 「誤解を招く言い方はやめたまえ。今は美咲ちゃん一筋だから」

 また急に立ち上がったと思えば、ダンッとテーブルに両手をついた。

 「っつーわけで、今から、この愛の伝道師・矢野の恋愛ときめき講座を始めます!」

 (やばい、変なスイッチ入っちゃった)

 俺と葉琉はさっさとカバンを持って立ち上がり、矢野を置いてカラオケルームから出た。矢野が慌てて追いかけてきて、1時間延長しようと言い出したので、延長料金を払ってくれるならいいけどと条件を提示したら、悔しそうに諦めていた。