「はっはっは。いいリアクション返してくれて、うれしい限り」
狐みたいに目を細め、満足そうに笑うのは、本校の生徒会長。
どこから現れたか、天津涼は、懸命にご飯を吹き出さないようにしている海藍に絡んでいる。
「そうだ。これ、食いっぱぐれちゃったんだけど、食う?」
どこから取り出したか、スティックのチョコパンを、強引に海藍の口に押しつける。
「や、やめてくらさいよ……」
男性同士の、そういうやりとりを養分にしている生徒たちが注目し始め、四人、いや五人は、新たな感情の受け皿となった。
涼は、断りもせずに、海藍が買ったペットボトルのお茶を口に含んだ。
「涼さん。つき合わされる身にもなってください……」
ふーっと悩まし気に髪をかき上げながら、ペットボトルをとり返す海藍。
「おまえ、夕陽だけじゃなくて、こんなかわいい子まで見つけてやんの。やるねぇ」
「えー。かわいいだってー。見る目がありますねー」
愛梨は、右手を頬に添えてよろこんでいた。
こういうところで素直に喜べるのは、愛梨の強みだった。
「おお。もしかして、脈があったりする?」
「あ、そういうのはいいです」
誉め言葉という、おいしいところだけは受け取って、肝心のところはきっぱり否定する愛梨。
「ありゃ、フラれたか」
涼も、軽口のつもりだったので気にしていなかった。
「じゃあ……」
で、今度は夕陽に視線を送ってくる。
「もうわかってると思いますけど、私、気に入らないことがあったら、すぐ噛みつきますからね」
「いいよぉ。キミ、退屈しなそうだし」
ふふふ、と笑う二人。
二人とも、そういう仲にはならないだろうという、暗黙の理解があるからこその、ジョークだった。
ところが、
「夕陽さんはダメです」
「夕陽はダメっ!」
それがわかっていない者たちにとっては、ジョークには聞こえない。
特に、光と愛梨にとっては、新たなライバル誕生という、由々しき問題である。
「ちょっと。やめてよ」
二人がそんな行動に出るとは、指の先ほども思っていなかった夕陽は、顔を赤らめた。
「なになになに!? どういう状況だこれは!? 海藍! これどうなってんの!?」
初めて手品を目にして興奮する子どものように、涼は瞳をキラキラと輝かせて、タネ明かしを求めた。
本校の生徒会長は、好奇心が旺盛であらせられた。
「僕も、まだどうなってるかわかってないんですよ」
「ほむ」
さっき、海藍に食うかと勧めたパンを、結局、自分で食べ始める。
パンを食べ終わると、涼は、からになった袋を海藍に放り投げた。
「おっと」
海藍がそれをキャッチするのと同時に立ち上がる。
「なかなか有意義なランチだったよ。それじゃ」
「どこ行くんですか? 自分で捨ててくださいよ」
「生徒会室。生徒会って、暇なようで、意外と仕事があるんだよ」
だから、ゴミ捨てくらいはやっておいてよと海藍に手を合わせて、去って行った。
「独特の雰囲気を持ってる人ね」
それが、涼に対する愛梨の感想。夕陽も同感だった。
あの人の本心とか本音は、どこにあるのか、わからいづらい。
「独特すぎるから、つき合うのが大変なんだよ」
ゴミ箱にパンの袋を捨てに行っていた海藍が、席に戻った。
「まぁー、なんにしても、よ」
愛梨は、ミートボールに使い捨てのフォークを刺した。
「あんたには負けない」
改めて、光に宣戦布告をした。
「夕陽を、さん付けでしか呼べない時点で、私のほうがリードしてると思うけどね」
と愛梨は光を挑発する。
「自分にとって大事な人を、呼び捨てにするなんて、できない」
「!?」
急に矛先が夕陽に向かってくる。
大事な人。
温かい緑茶を飲んでいた夕陽は、大事な人、と言われて耳を赤くした。
男の人にそんなことを言われたのは初めてで、女の子に、ここまでの好意を向けられたのも初めてだった。
「結婚したら、さん付けで呼びたいと思っているから」
んがごぼぉっ!
夕陽は、海藍のリアクションなんて凌駕する、およそ女子が出してはいけない、海に溺れかけたような音を発し、むせかえった。
「わ、私、教室で食べるから!」
おぼつかない手つきで、慌てて弁当箱を片づけた夕陽は、仲間たちの返事も待たずに校舎の中に駆けて行った。
光は後を追いかけようとしたが、海藍によって自重させられた。
「なにか気に触ったのかな?」
「わからないんだ……」
「うん。どこか問題だったかな?」
光としては、純粋な気持ちを吐露しただけなのに、なんで夕陽が怒ったように声を荒げてしまったのかが理解できない。
「くそっ。絶対っ、こんな奴にっ、負けないっ!」
デザートのイチゴを、フォークで、ぶす、ぶす、と刺しまくる愛梨。
(これって、もしかしなくても、僕がまとめないといけないやつ……?)
海藍の頬を、汗がつたった。
狐みたいに目を細め、満足そうに笑うのは、本校の生徒会長。
どこから現れたか、天津涼は、懸命にご飯を吹き出さないようにしている海藍に絡んでいる。
「そうだ。これ、食いっぱぐれちゃったんだけど、食う?」
どこから取り出したか、スティックのチョコパンを、強引に海藍の口に押しつける。
「や、やめてくらさいよ……」
男性同士の、そういうやりとりを養分にしている生徒たちが注目し始め、四人、いや五人は、新たな感情の受け皿となった。
涼は、断りもせずに、海藍が買ったペットボトルのお茶を口に含んだ。
「涼さん。つき合わされる身にもなってください……」
ふーっと悩まし気に髪をかき上げながら、ペットボトルをとり返す海藍。
「おまえ、夕陽だけじゃなくて、こんなかわいい子まで見つけてやんの。やるねぇ」
「えー。かわいいだってー。見る目がありますねー」
愛梨は、右手を頬に添えてよろこんでいた。
こういうところで素直に喜べるのは、愛梨の強みだった。
「おお。もしかして、脈があったりする?」
「あ、そういうのはいいです」
誉め言葉という、おいしいところだけは受け取って、肝心のところはきっぱり否定する愛梨。
「ありゃ、フラれたか」
涼も、軽口のつもりだったので気にしていなかった。
「じゃあ……」
で、今度は夕陽に視線を送ってくる。
「もうわかってると思いますけど、私、気に入らないことがあったら、すぐ噛みつきますからね」
「いいよぉ。キミ、退屈しなそうだし」
ふふふ、と笑う二人。
二人とも、そういう仲にはならないだろうという、暗黙の理解があるからこその、ジョークだった。
ところが、
「夕陽さんはダメです」
「夕陽はダメっ!」
それがわかっていない者たちにとっては、ジョークには聞こえない。
特に、光と愛梨にとっては、新たなライバル誕生という、由々しき問題である。
「ちょっと。やめてよ」
二人がそんな行動に出るとは、指の先ほども思っていなかった夕陽は、顔を赤らめた。
「なになになに!? どういう状況だこれは!? 海藍! これどうなってんの!?」
初めて手品を目にして興奮する子どものように、涼は瞳をキラキラと輝かせて、タネ明かしを求めた。
本校の生徒会長は、好奇心が旺盛であらせられた。
「僕も、まだどうなってるかわかってないんですよ」
「ほむ」
さっき、海藍に食うかと勧めたパンを、結局、自分で食べ始める。
パンを食べ終わると、涼は、からになった袋を海藍に放り投げた。
「おっと」
海藍がそれをキャッチするのと同時に立ち上がる。
「なかなか有意義なランチだったよ。それじゃ」
「どこ行くんですか? 自分で捨ててくださいよ」
「生徒会室。生徒会って、暇なようで、意外と仕事があるんだよ」
だから、ゴミ捨てくらいはやっておいてよと海藍に手を合わせて、去って行った。
「独特の雰囲気を持ってる人ね」
それが、涼に対する愛梨の感想。夕陽も同感だった。
あの人の本心とか本音は、どこにあるのか、わからいづらい。
「独特すぎるから、つき合うのが大変なんだよ」
ゴミ箱にパンの袋を捨てに行っていた海藍が、席に戻った。
「まぁー、なんにしても、よ」
愛梨は、ミートボールに使い捨てのフォークを刺した。
「あんたには負けない」
改めて、光に宣戦布告をした。
「夕陽を、さん付けでしか呼べない時点で、私のほうがリードしてると思うけどね」
と愛梨は光を挑発する。
「自分にとって大事な人を、呼び捨てにするなんて、できない」
「!?」
急に矛先が夕陽に向かってくる。
大事な人。
温かい緑茶を飲んでいた夕陽は、大事な人、と言われて耳を赤くした。
男の人にそんなことを言われたのは初めてで、女の子に、ここまでの好意を向けられたのも初めてだった。
「結婚したら、さん付けで呼びたいと思っているから」
んがごぼぉっ!
夕陽は、海藍のリアクションなんて凌駕する、およそ女子が出してはいけない、海に溺れかけたような音を発し、むせかえった。
「わ、私、教室で食べるから!」
おぼつかない手つきで、慌てて弁当箱を片づけた夕陽は、仲間たちの返事も待たずに校舎の中に駆けて行った。
光は後を追いかけようとしたが、海藍によって自重させられた。
「なにか気に触ったのかな?」
「わからないんだ……」
「うん。どこか問題だったかな?」
光としては、純粋な気持ちを吐露しただけなのに、なんで夕陽が怒ったように声を荒げてしまったのかが理解できない。
「くそっ。絶対っ、こんな奴にっ、負けないっ!」
デザートのイチゴを、フォークで、ぶす、ぶす、と刺しまくる愛梨。
(これって、もしかしなくても、僕がまとめないといけないやつ……?)
海藍の頬を、汗がつたった。

