(私のせいで、大変なことに……)
愛梨は責任を感じていた。
喧嘩の元をたどっていくと、愛梨が、海藍に対して、邪険な態度で接してしまったことが発端なのである。
「ていうか、結局あんたたちって、どういう関係なの?」
ツインテの女の子は、腰に両手をあてがい、夕陽を見下している。
お姫様のような、尊大な態度。
(あれ、わざとやってるでしょ)
なんで彼女が、わざと挑発的な態度をとっているのか、愛梨は把握した。
夕陽は、上から目線で接してこられると、反発してしまうタイプなのだ。それを承知のうえで、あえて夕陽を焚きつけている。
「さっきも言ったでしょ。君には関係無いって」
「あんたこそ聞いて無かったの? 関係あるわよ。私が気になるんだもの」
「なんで名前も知らない相手に、そんなことを教えないといけないの?」
「瀬川多香子よ。はい。これでいいでしょ? あたし、気になることがあってモヤっとするの、嫌いなの」
「そんなの、私の知ったことじゃないよ」
「ケチくさい人間ね」
「自己中心的な人間だね」
本当に初対面かと疑いたくなるほどに、スムーズに言葉を投げつけ合い、会話のドッジボールを行う二人。
言葉を交わすごとに、半歩、また半歩と、互いの間合いに踏み込んでいく。
バチバチと火花が散っている。
「待った。夕陽ちゃんも君も、落ち着いて」
そこで海藍が、仲裁に入ろうとした。
しかし、夕陽と多香子は、相手に向けていた鋭い視線を、一時的に海藍に向けた。
「ひっ……!」
関係の無い奴は黙っとれ!
二人の視線はそう言っていた。
刀を突きつけられたような恐怖を味わいながらも、なんとか海藍は、仲裁のタイミングをうかがっていた。
(実際、いい奴なんだよなぁ)
海藍は、顔も良ければ性格も良い。
他人のために一生懸命になることができる。
(完璧超人かよ……)
そして愛梨は、そんな完璧超人な海藍が、気に入らない。
完璧超人の海藍を受け入れられない、自分も嫌い。
愛梨の良心が、ずきずきと痛んだ。
「あのね、私たちはね……」
良心の呵責に耐えきれなくなって、愛梨は重い腰を上げた。
海藍が不憫すぎて、じっとしていられなくなったのだ。
「君たち」
がっつりと、お互いを見合っていた夕陽と多香子はもちろん、愛梨も海藍も、その存在に気づかなかった。
「そろそろ、先生が来る時間だから、席に戻ったほういいよ」
すぐ近くにいるはずなのに、教室の隅っこから聞こえてくるような、小さい声。
表情は冴えなくて、見るからに存在感が薄い。
いわゆる、根暗っぽい男の子。
「余計なお世話よ。引っ込んでなさい」
気が強い多香子がにらみつけても、彼は、微動だにしなかった。
ビビっているふうでも無い。
表情を変えず、静かな瞳を返すだけ。
「な、なによ……」
それが多香子には効果的だったようだ。
夕陽みたいに噛みつき返してきてくれれば、反撃もしやすい。
ところが、ファイティングポーズすらとってこない相手を、無慈悲に、一方的に攻撃するというわけにはいかない。それは単なる、いじめだ。
「はーい。みなさん、席についてくださいねー」
ちょうどそのとき、教室のドアが開いた。
愛梨は責任を感じていた。
喧嘩の元をたどっていくと、愛梨が、海藍に対して、邪険な態度で接してしまったことが発端なのである。
「ていうか、結局あんたたちって、どういう関係なの?」
ツインテの女の子は、腰に両手をあてがい、夕陽を見下している。
お姫様のような、尊大な態度。
(あれ、わざとやってるでしょ)
なんで彼女が、わざと挑発的な態度をとっているのか、愛梨は把握した。
夕陽は、上から目線で接してこられると、反発してしまうタイプなのだ。それを承知のうえで、あえて夕陽を焚きつけている。
「さっきも言ったでしょ。君には関係無いって」
「あんたこそ聞いて無かったの? 関係あるわよ。私が気になるんだもの」
「なんで名前も知らない相手に、そんなことを教えないといけないの?」
「瀬川多香子よ。はい。これでいいでしょ? あたし、気になることがあってモヤっとするの、嫌いなの」
「そんなの、私の知ったことじゃないよ」
「ケチくさい人間ね」
「自己中心的な人間だね」
本当に初対面かと疑いたくなるほどに、スムーズに言葉を投げつけ合い、会話のドッジボールを行う二人。
言葉を交わすごとに、半歩、また半歩と、互いの間合いに踏み込んでいく。
バチバチと火花が散っている。
「待った。夕陽ちゃんも君も、落ち着いて」
そこで海藍が、仲裁に入ろうとした。
しかし、夕陽と多香子は、相手に向けていた鋭い視線を、一時的に海藍に向けた。
「ひっ……!」
関係の無い奴は黙っとれ!
二人の視線はそう言っていた。
刀を突きつけられたような恐怖を味わいながらも、なんとか海藍は、仲裁のタイミングをうかがっていた。
(実際、いい奴なんだよなぁ)
海藍は、顔も良ければ性格も良い。
他人のために一生懸命になることができる。
(完璧超人かよ……)
そして愛梨は、そんな完璧超人な海藍が、気に入らない。
完璧超人の海藍を受け入れられない、自分も嫌い。
愛梨の良心が、ずきずきと痛んだ。
「あのね、私たちはね……」
良心の呵責に耐えきれなくなって、愛梨は重い腰を上げた。
海藍が不憫すぎて、じっとしていられなくなったのだ。
「君たち」
がっつりと、お互いを見合っていた夕陽と多香子はもちろん、愛梨も海藍も、その存在に気づかなかった。
「そろそろ、先生が来る時間だから、席に戻ったほういいよ」
すぐ近くにいるはずなのに、教室の隅っこから聞こえてくるような、小さい声。
表情は冴えなくて、見るからに存在感が薄い。
いわゆる、根暗っぽい男の子。
「余計なお世話よ。引っ込んでなさい」
気が強い多香子がにらみつけても、彼は、微動だにしなかった。
ビビっているふうでも無い。
表情を変えず、静かな瞳を返すだけ。
「な、なによ……」
それが多香子には効果的だったようだ。
夕陽みたいに噛みつき返してきてくれれば、反撃もしやすい。
ところが、ファイティングポーズすらとってこない相手を、無慈悲に、一方的に攻撃するというわけにはいかない。それは単なる、いじめだ。
「はーい。みなさん、席についてくださいねー」
ちょうどそのとき、教室のドアが開いた。

