海鳴りが聞こえる街で

「あんたたちさぁ」
 みんなの注目が、そこに集まった。
 癖のある長い髪の毛を、リボンで結んで二つのおさげを作っている女の子は、夕陽たちの輪の中に加わってきた。
 夕陽、愛梨、海藍の三人を見回す顔つきは、いかにも勝ち気で怖いもの知らずといった感じで、ちょっとキツイ印象を受ける。
「なに?」
 夕陽は、立ちはだかるように、彼女のまえに立つ。
「さっきから見てれば、黙ったままにらみ合ってるから、気になったの。どういう関係?」
 どよぉっ……!
 教室がどよめいた。
 彼女は、クラスメイトたちが聞きたかったことを、簡潔にまとめて口にした。
「ねぇ、どうなの」
 急かすように聞いてくる。
 高圧的な態度に夕陽は感じた。
 気の弱い人間だったら、ひるんでもおかしく無さそうだけれど、夕陽は彼女のまえに立ち、しっかりと見つめ返す。
 なぜか、いきりなりメンチの切り合いが始まり、クラスメイトたちは戸惑う。
 海藍と愛梨も、不安そうに二人を見守る。 
「君には関係無いじゃん」
 夕陽は言い放った。
「な……、夕陽ちゃん!」
「夕陽!」
 椅子から腰を挙げようとした海藍と愛梨を、夕陽は手で制した。
 視線は、そらさないままだ。
「ふぅん」
 彼女は、かすかに口角を吊り上げる。
「喧嘩慣れしてるじゃない。おとなしそうな顔して」
「……」
 対して夕陽は、口を結んだままだった。
 自分よりも背の高い相手を、無言のまま見据えている。
 まるで剣の達人が間合いをはかるかごとく、夕陽とツインテールの女の子は、互いを見合ったままだ。
 もはや一年C組の空気は、最悪であった。 
 こうなれば、気の毒なのは、巻き込まれたクラスメイトである。
 なぜだ。なぜこうなったんだ。
 自分たちは、平穏をもたらしてくれる、救世主を望んだはずだったのに。
 みんなが、頭を抱えたい気分だった。