海鳴りが聞こえる街で

「今野夕陽さんは、一年C組です」
「真中愛梨さんはー、一年C組ですね」
「えーと、文月海藍さん……っと。一年C組になります」
 正門を抜けた先に仮設されたテントでは、監督役の教師と、複数人の生徒が、受付係兼、案内係を務めていた。
 先輩方は、登校してきた新入生一人一人の生徒手帳を確認して、所属クラスを告げている。
「い、一緒のクラスみたいだね」
 海藍が、がんばって口火を切った。
「そ、そうだね」
 海藍にだけ負担をかけるわけにはいかないと、夕陽も乗っかる。
 一緒のクラスで良かったとか、うれしいとか、普通だったら、そういう社交辞令を添えるのがいいのかもしれないけれど、この場合は、藪蛇も藪蛇。
 あからさまに不機嫌になっている愛梨の、逆鱗に触れかねない。
「昇降口は、このまま、中庭をまっすぐ進んだ先にあります。一年生の下駄箱は、向かって左側です。校内には案内の立て札がありますので、それに従って進んでください」
 このあとの行動の指針を示してくれた先輩に、夕陽は心から感謝した。
 先輩に指示をされたからには、このまま立ち止まっているわけにはいかないからだ。
(なんの解決にもなってないけど)
 でも、だ。
 教室に入って、それぞれの席についたら、あとは担任の先生がやって来るまでの間、各々、好きに時間を消費すればいい。
 海藍は、自分の席でおとなしくしていればいいし、その間に、夕陽は愛梨とおしゃべりでもすれば、愛梨の機嫌も治ってくるだろう。本人だって、いつまでも仏頂面でいたくは無いだろうし。
 ところが。
「……」
 黒板に張り出されていた席順を見て、夕陽は絶句した。
 こ、んの、が苗字の夕陽は、廊下側から見て、三列めの先頭。教卓のまん前の席。このクラスで、もっとも先生に近い距離で一年間を過ごすことになってしまった。
 だけどそれは、いまはどうでもいい。
 ふ、みつき。の海藍は、窓側から数えて、二列めの先頭。そして……。
「なんで……」
 ま、なか。の愛梨は、まんなかという苗字とは正反対の、窓側の列の先頭の席だった。
 なんの因果か、海藍と愛梨は、隣の席におさまることになったのだ。
 顔を見合わせる、愛梨と海藍。
「よ、よろしく」
 ひきつりながら、それでも海藍は、愛梨に友好的に接しようとしていた。
(海藍くん、根性あるなぁ)
 夕陽は感心した。