「冴贔屓(びいき)、おれも反対」




降ってきた声に目線を動かせば、ほんのり香る石けんのにおい。


3人トリオの最後のひとり。
優(すぐる)が、涼しげな顔で下敷きを手に持ち、私たちを見下ろしていた。




「あ!なんだよ優っ、邪魔すんな!」

「むり」




取り返そうと手を伸ばした冴をヒョイとかわし、下敷きをどこかに隠してしまう。




「ちょ、優、それ私の……」


「冴のことチョーシ乗らせたから、紅羽も少し反省ね。あとでふたりになったら返してあげる」




優はいたずらっぽく口の端を上げた。
余裕のある笑みになんだか負けた気分になってしまい、おとなしく唇を引き結ぶ。



そんな私を見た優は満足そうにうなずいて、子どもをあやすみたいにヨシヨシと頭を撫でてくる。
まったくもって嬉しくない。



色素のうすい瞳と髪。整った顔。
優はこんな田舎には似つかわしくない、どこかアーバンな雰囲気を持っている。



そのせいか都会に憧れる年頃の女の子たちからは、いつもどこか恋心とは違ったまなざしを寄せられていた。
憧れってやつ?鑑賞的な。
なんでも他の男子たちとは別格らしい。



かくいう私もどうして優と親しくなったのか、慕ってくれているのか正直おぼえていない。
ま、幼稚園のころの記憶だし、そんなもんだよね。