私は、唐獅子様の言い伝えを
「怖い作り話」と信じていた。
つまり本気にしていなかったのだ。
その存在は昔の人の空想、あるいは寓話的な類なのだと。
伝承などそんなものである。
しかし、いざこうして、供物などという生々しい姿を目にした今。
唐獅子様は──本当にいるんじゃないか。
なんていう、このうえなく恐ろしい現実味が足元からじわじわと侵食し、この身を固くさせた。
「なんか……怖くなってきちゃった。はは……」
恐怖を誤魔化すように笑えば、それを見越した都がすぐさまそばにきて私の手を握ってくれる。
「大丈夫だよ紅羽。すべて憶測だから。唐獅子様なんていないよ」
「都……」
「それに、紅羽には俺たちがいるでしょ?なにがあっても守るから」
伝わる温もりが、だんだんと冷えきった体を元通りにしてくれる。
都はやさしい。
こういうとき、いつも真っ先に気づいて安心させてくれる。
「紅羽もう帰ろ。なんかここやだ」
優に空いている方の手を引かれた。
声音に嫌悪がにじんでいる。
どうやら優も私と同じ気持ちみたいだ。
結局、学校を出る前のように、都と優に挟まれる形に。
2人なりに守ってくれていることが伝わってきて嬉しくなる。

