「すげーな都は。将来の事とかちゃんと考えてて。オレなんか、なんも考えてない」




横から感嘆の声をあげる冴。
先ほどの落ちこみからは、いくらか復活したみたい。




「冴……私たちもう高3なんだよ。それってどうなの」


「そういわれてもなぁ。想像がつかねーんだよ。未来とか。オレは今しか生きてねーし。強いて言うなら、この村のどっかテキトーなとこに就職して、それなりに生活して人生終えるのかなってくらい」




内容のわりに、その口ぶりは真剣そのものだった。
珍しく真面目な冴。
そんな彼に都が笑いかける。




「そうなの?じゃあ冴も一緒に公務員になろうよ」


「はぁ?オレが?」




都のお誘いに、勉強嫌いの冴はムリムリと全力でかぶりを振った。
あまりの慌てっぷりに笑ってしまう。




「す、優は?進路とかもう決まってんの?」




冴は逃げるように優へと話題をふった。
私たちを静かに傍観していた彼がゆっくりと口を開く。




「おれは家業継ぐかな」




サラリと言った優。



優の家は米農家で、敷地内に大きな倉がいくつもある。
都会的な雰囲気に反して、住んでいるところは立派な日本家屋。
幼いころは優の家に遊びに行くたび迷子になっていた記憶がある。



優の口から家業という単語が出るたび、あまりに本人には似つかわしくないイメージのズレが頭をよぎって違和感がすごいのだ。




「そーいやそうか。いいなお前は楽そうで」

「隣の芝が青く見えてるだけだよ」




優は冴の言葉を適当にかわすと、その視線を私に移した。




「どう紅羽、お嫁にくる?」

「えっ」




本気なのか冗談なのか。
あいかわらず読めない表情を向けられて困惑する。
この男はいつもこうだ。




「からかわないで」


「えー、おれのお嫁さんになってよ。一生独身はつらい」


「なんだ優それどーいう意味だコラ!」




私が反応する間もなく冴が噛みつく。


なんだか恥ずかしくて、ぷいと顔を背けた。