わたしたちは星の歌を紡ぐ

(やっぱりなぁー。でもなぁー。違うよなぁー)
 澪は、深く考え込んでいた。
 倉持さんに指摘されたように、考えすぎて身動きがとれなくなるのは、澪の悪い癖だった。
 ノートパソコンで流れているのは、AYAが雑談を行っている配信のアーカイブだった。
 このネットアイドルのアーカイブを視聴するのは、澪のライフワークになっていた。
 きっかけは倉持さんだけれど、もはや、熱心なファンと言ってもいいくらいに、AYAのことにくわしくなっていた。
 そして、AYAのことを見て、声を聴くにつれ、綾子とAYAは、とても似ていると感じるようになった。
 配信をしている人が星の数ほどいるご時世、声が似ている人がいたからって、それがなんなんだと。
 それに、声優という職業もあるし、そういう人たちと見比べて、声が似てるくらいで同一人物じゃないかって疑ってたら、キリが無い。
 だけど、似てるという表面的じゃないところが、激しく似ている。
 ……ような気がする、ような……。
「顔も似てるんだよなぁ、この二人の場合」
 AYAのほうが、しっかりメイクをしていて大人っぽいという違いはある。
 こないだ会った綾子は、ナチュラルメイクだったし、クリエイターっていうお仕事をしていて目が悪くなったのか、眼鏡をかけている。
「いや。初めて綾子に会ったときは、綾子もしっかりメイクしてたよね」
 と、澪は綾子が泣いていたときのことを思い出した。
 でも、AYAは黒髪で、綾子は天然の亜麻色の髪。ここが決定的に違う。
(ウィッグ、とか?)
 綾子が、身分の特定を防ぐために、にウィッグを使用していて、まったく別の髪型になっているとしたら。眼鏡も、伊達メガネだったら。
 綾子は現役の高校生だし、人気アイドルであることを知られないために、そういう工夫をしているのかも。
「あー、やめ、やめ。そんなわけない」
 直観を信じきれない澪は、そこで考えるのをやめてしまった。
 綾子は、インターネットクリエイターで、作詞の仕事を任されていて、悪戦苦闘しているから、澪に助けを求めてきた。
 海で泣いていたのも、作詞の仕事が行き詰まったせいだ。
 作家さんや作詞家さんが、仕事に詰まったときに、海を見に行くという話を聞いたことがあるし。
「次にリリースする曲は、私が作詞を担当するの」
「!?」
 アーカイブが終わって、数分の動画にきりかわっていた。
 AYAの動画ばかり見ていたから、サイトが自動的に、別のAYAの動画を再生し始めたのだ。
「自分で、作詞を……」
 AYA本人が作詞に挑戦するという、告知動画だった。
 胸が、どきどきする。
 どうして、綾子とAYAには、こんなにも共通点が多いのだろう。
 どうして、澪の胸をこんなにさわがせるのだろう。
「お姉、そろそろ出かけないとだよ~」
「うん。わかった」
 湊が澪を呼んできたので、すぐに視聴していた動画サイトを閉じた。