澪は、電車の中で倉持さんと合流した。
このまま二人して電車に揺られていれば、学校の最寄り駅に到着する。
けれど、今日の目的地は学校じゃないので、途中の駅で下車する。
(なにも、こんな日に、あんなメッセージ送ってこなくても、いいでしょ)
澪の表情は堅かった。
原因は、さっき綾子から送られてきたメッセージだった。
(あー、もう。頭がこんがらがるって)
ただでさえ澪は、友達との勉強会という一大イベントを控えているのに。
改札を抜けて、駅を出る。
ここから歩いて10分くらいのところに、図書館がある。
地元民の赤嶺さんが、すでに自習スペースを確保してくれていた。
「あ、あのさ……」
倉持さんが、遠慮がちに口を開いた。
「なんか。ごめんね」
「な、なにが?」
「強引に、巻き込んじゃって」
倉持さんは、白のキャミソールの上にピンクのカーディガンを羽織っていた。
デニム地のハーフパンツは、元気な倉持さんのイメージにぴったりだった。
それで、倉持さんは、今日も薄くメイクをしていた。
澪は気づいたけれど、恥ずかしいから見て見ないフリをした。
「あのあと、かほっちと、チョコちゃんとも反省会してさ……」
かほっちというのは赤嶺さんの愛称で、チョコちゃんは黄瀬さんの愛称である。
「澪っち、やさしいから、無理に頼み込んだらいけるだろうって、甘えちゃってたなーって」
倉持さんは、澪にしゃべる暇を与えず、矢継ぎ早に言う。
そうこうしているうちに、建物の間から図書館の屋根が見えた。
「やっぱさ、澪っちみたいに、いい大学目指してる人は、同じくらいのレベルの人と勉強しないと、ためにならないじゃん? ウチみたいなおバカに付き合わせちゃって、悪いなって。あの、でも、今日だけだからさ」
「待ってよ倉持さん。どうしたの」
そんなにかしこまって下手に出られちゃ、澪のほうが申し訳ない気分になってくる。
「澪っち、今日、機嫌わるそうに見えたから……」
倉持さんは、両手の人差し指をくっつけながら、言いにくそうに言った。
(しまった! 綾子のことばっかり考えてた!)
澪は、倉持さんと電車で合流してから、ひと言も発していなかった。
綾子から送られてきたメッセージへの返信をどうするかで、頭がいっぱいだったのだ。
もしかしたら、倉持さんになにか話しかけられたかもしれないけれど、覚えていない。テキトーなあいづちを返していたかもしれないけど、それも覚えていない。
「えーっと、ね。機嫌、悪くないよ」
なにからなにまで誤解だらけだけど、まずは、それを伝えた。
澪は愛嬌の無いキツイ顔つきをしているから、一人の世界に入って考えごとをしていると、機嫌が悪そうに見えてしまうのだ。
「ホントに? ウチと勉強するの、イヤじゃない?」
「イヤじゃないけど……。うーん……、と……。不安?」
どうにかこうにか、本音に近そうな言葉をひねり出す。
ああ、会話のキャッチボールってむずかしい。
「なにが不安なの?」
質問者と回答者が入れ替わっていた。
「勉強、教えたことなんて無いから」
ごまかしてもしかたないから、素直に応える。
図書館を目のまえにして、いまさらだけれど。
でも、ほんのちょっぴりだけど、素の澪で倉持さんと会話できている感じがした。
「なーんだ。そんなことで悩んでたんだ」
「う、うん」
本当は、別のことを考えていたせいで無言だったんだけど、そんなことをわざわざ口にする必要が無いっていうことは、澪にでも判断がつく。
「澪っちは、気にすることないんだよ」
倉持さんが歩き出したので、澪も並んで歩いた。
図書館の敷地に入る。
「ウチが、澪っちなら大丈夫って思ったんだから」
「……」
その過剰評価が重いんだよなぁ。
倉持さんは、澪のどこに価値を感じているのか聞いてみたい。
(今日は、そんな暇は無いんだろうけど)
綾子への返信も、まだ済んでいない。
このまま二人して電車に揺られていれば、学校の最寄り駅に到着する。
けれど、今日の目的地は学校じゃないので、途中の駅で下車する。
(なにも、こんな日に、あんなメッセージ送ってこなくても、いいでしょ)
澪の表情は堅かった。
原因は、さっき綾子から送られてきたメッセージだった。
(あー、もう。頭がこんがらがるって)
ただでさえ澪は、友達との勉強会という一大イベントを控えているのに。
改札を抜けて、駅を出る。
ここから歩いて10分くらいのところに、図書館がある。
地元民の赤嶺さんが、すでに自習スペースを確保してくれていた。
「あ、あのさ……」
倉持さんが、遠慮がちに口を開いた。
「なんか。ごめんね」
「な、なにが?」
「強引に、巻き込んじゃって」
倉持さんは、白のキャミソールの上にピンクのカーディガンを羽織っていた。
デニム地のハーフパンツは、元気な倉持さんのイメージにぴったりだった。
それで、倉持さんは、今日も薄くメイクをしていた。
澪は気づいたけれど、恥ずかしいから見て見ないフリをした。
「あのあと、かほっちと、チョコちゃんとも反省会してさ……」
かほっちというのは赤嶺さんの愛称で、チョコちゃんは黄瀬さんの愛称である。
「澪っち、やさしいから、無理に頼み込んだらいけるだろうって、甘えちゃってたなーって」
倉持さんは、澪にしゃべる暇を与えず、矢継ぎ早に言う。
そうこうしているうちに、建物の間から図書館の屋根が見えた。
「やっぱさ、澪っちみたいに、いい大学目指してる人は、同じくらいのレベルの人と勉強しないと、ためにならないじゃん? ウチみたいなおバカに付き合わせちゃって、悪いなって。あの、でも、今日だけだからさ」
「待ってよ倉持さん。どうしたの」
そんなにかしこまって下手に出られちゃ、澪のほうが申し訳ない気分になってくる。
「澪っち、今日、機嫌わるそうに見えたから……」
倉持さんは、両手の人差し指をくっつけながら、言いにくそうに言った。
(しまった! 綾子のことばっかり考えてた!)
澪は、倉持さんと電車で合流してから、ひと言も発していなかった。
綾子から送られてきたメッセージへの返信をどうするかで、頭がいっぱいだったのだ。
もしかしたら、倉持さんになにか話しかけられたかもしれないけれど、覚えていない。テキトーなあいづちを返していたかもしれないけど、それも覚えていない。
「えーっと、ね。機嫌、悪くないよ」
なにからなにまで誤解だらけだけど、まずは、それを伝えた。
澪は愛嬌の無いキツイ顔つきをしているから、一人の世界に入って考えごとをしていると、機嫌が悪そうに見えてしまうのだ。
「ホントに? ウチと勉強するの、イヤじゃない?」
「イヤじゃないけど……。うーん……、と……。不安?」
どうにかこうにか、本音に近そうな言葉をひねり出す。
ああ、会話のキャッチボールってむずかしい。
「なにが不安なの?」
質問者と回答者が入れ替わっていた。
「勉強、教えたことなんて無いから」
ごまかしてもしかたないから、素直に応える。
図書館を目のまえにして、いまさらだけれど。
でも、ほんのちょっぴりだけど、素の澪で倉持さんと会話できている感じがした。
「なーんだ。そんなことで悩んでたんだ」
「う、うん」
本当は、別のことを考えていたせいで無言だったんだけど、そんなことをわざわざ口にする必要が無いっていうことは、澪にでも判断がつく。
「澪っちは、気にすることないんだよ」
倉持さんが歩き出したので、澪も並んで歩いた。
図書館の敷地に入る。
「ウチが、澪っちなら大丈夫って思ったんだから」
「……」
その過剰評価が重いんだよなぁ。
倉持さんは、澪のどこに価値を感じているのか聞いてみたい。
(今日は、そんな暇は無いんだろうけど)
綾子への返信も、まだ済んでいない。

