わたしたちは星の歌を紡ぐ

 さかのぼれば、綾子との出会いが、劇的な変化の予兆だった。
 あの日、綾子の瞳からこぼれ落ちたのは、本当に、願いをかなえてくれる流れ星だったのだろうか。
 世間はゴールデンウィークに入って、うきうきしていた。
 駅の構内を歩いている人の足取りも、心なし、軽いように見える。
(みんな、休みかぁ)
 澪はあたりを見渡した。
 現在、午前9時20分。
 社会人の出勤時間から外れているということもあるけれど、連休中だから、いつもよりスーツを着た人たちの割合が少ない。
 スマホを改札に当てて通過する。
 目的の電車の時間まで、あと10分くらいあるから、いったんお手洗いに入る。
 もよおしているわけじゃない。
 トイレの鏡で、自分の姿を確認した。
(寝ぐせはついてない、と。でも、こんな服でよかったかな……?)
 単色グレーのタックブラウスにジーパン、スニーカー。
 肩にかけているトートバッグには勉強道具とお財布、愛用のポーチ。と、必要最低限のものだけを詰め込んできた。
(みんなで勉強するだけだし、こんなもん、こんなもん)
 家を出るときから、自分に言い聞かせ続けてきたけれど、コーデへの自信、まったくナシ!
 だって、友達と集まって勉強するなんて、初めての経験なのだから。
 気休めに、指で前髪を整えてから、トイレを出てホームに向かった。
 胸がどきどきとしている。
 電車は、時刻表通りにやって来た。
 日本の交通機関の優秀さを、澪はうらめしく思った。
(乗るしか、ないよね)
 電車に体を滑り込ませる。
 登校するために使っている、いつもの路線のいつもの電車なのに、ぜんぜん違う乗り物みたいに感じた。
「あ。倉持さんに連絡……」
 澪は思い出したようにつぶやいて、スマホを開く。
 グループチャットに、<4号車に乗ったよ>と書き込んだ。
 すぐに<了解!!!>と返信がつく。
 ふぃ~……。と、額の汗をぬぐう。
 クラスメイトたちとの勉強会。グループチャットでのやりとり。
 初体験つづきで心労が絶えない。
 そして澪は、このあと、倉持さんに勉強を教えるという重要ミッションをこなさないといけない。
(こんなに、いろんなことが動き出すなんて)
 スマホの電話帳を確認する。
 この数週間のあいだに、家族以外の名前が4人も増えた。
 喜ばしいことなんだろうけれど、あまりにも一気に周辺情報が増えたので、処理するのが大変だ。
(んぅ? またメッセ……)
 それは、澪に変化をもたらした、渦中の人からのメッセージだった。
「なぁっ……」
 澪は、倉持さんに勉強を教えてほしいとお願いされたときと、同じくらいおどろいて、同じくらいの声で叫ぼうとした。
 でも、ここは電車という公共スペースなので、こらえた。
<今度、澪ちゃんのお家におじゃましてもいいですか?>
 いいですか。と、判断を澪にゆだねる体ではあったけど、どこか、有無を言わせない圧を澪は感じた。