来世まで、貴方のお傍に。


椿さんは旦那様の迫力に負けないくらい詰め寄るとそう強く言い放った。

そういえば祝言の日に旦那様から“女という生き物が嫌い”と言っていたのを思い出す。

契約婚だから仕方なく私と一緒になったのはわかるけどどうしてそこまで女性が嫌いなのだろうか。

「私は祝言の日、そいつとは他人のままでいると契約を交わした。だから形だけの夫婦だとお前は聞いてるはずだが?」

淡々と話す旦那様は感情がない。
怒っているのか、面倒くさがっているのか、時間の無駄だと思っているのか。

ここ数日、仕事を一緒にしてわかった。

旦那様には“表情がない”ということを。多少なりとも顔の筋肉や目元の動きはあるがやはり感情はどんな場面になっていても分からない。

それは単に……女性が嫌いということだけが関係しているということなのか?

「はい。それは聞いています。ですが皇帝様から“後継を産め”という内容を言われてるそうですね?そのことを達成出来なければ離縁できるものもできませんよ?」

「「……」」

椿さんは真正面から正論を堂々とぶつけた。そのあまりの希薄に私と旦那様は黙り込む。

静まり返ったこの辺りは嫌な空気が漂い始めた。

「……まぁまぁ、椿さん。そこまで当主様を責めなくてもいいのではないですか?」

「秋雷さん。いつからそこに」

「今さっき。当主様も理由がなくてこんな態度をとってる訳じゃないんだから。それは椿さんでもわかるでしょう?」

椿さんと旦那様の間に入ったのは側近の秋雷さんだった。秋雷さんは苦笑いすると旦那様の前に庇うようにして立っている。

……女性が、嫌いな理由……。

秋雷さんの言葉に引っかかって、思わず旦那様を見た。だけどやはり私には見向きもしないでどこか遠くを見つめている。

「……わかりました。今日は布団を戻します。でも、いつかは夫婦ふたりでしっかりと愛を育んでくださいね」

秋雷さんに負けたのか椿さんは折れたように頭を下げた。顔をあげると悲しそうな目で私を見ていた。

その表情にギュッと胸が切なくなる。

「そうだね。これはふたりの問題だからな。当主様も少しは向き合ってあげてくださいね」

「……少し、頭を冷やしてくる」

「旦那様……」

一旦話し合い?的なものが終わり、旦那様は背を向けてどこかへ行ってしまった。

その姿があまりにも寂しい雰囲気で私は思わず旦那様を引き留めようとした。

……結婚して、旦那様のあんな姿を見たのは初めてかもしれない。

今回は椿さんが少し悪いと思ったけど、旦那様にもそれなりの理由があってあの日私にあんな契約内容を提示したのかな。