契約婚をした向こうの家から提案され、私はそれを了承した。今更旦那様と仲良くしたいとかは思わない。
だけど……もう少し、私と話してもいいのではないかと思う。仕事もこれから一緒にやらなければいけないし。
「そうでしたか。申し訳ございません。神楽家の当主として花嫁様にそのような態度を取っていると思うと恥ずかしく思います」
「そんな椿さんが謝ることないですよ。これはお互い利害が一致した関係ですから。ただ……」
あまりにも申し訳なさそうな表情で謝る椿さんに胸が少し痛む。余程旦那様のことをお慕いしているのだろう。
一生懸命この家で働く彼女は、私にもよくしてくれていた。
「ただ?」
「……皇帝様からのお言葉に“後継となる男児を産み、育てよ”とあるんです。この内容はいつ達成出来るのやら。あの様子じゃあ、いつまで経ってもそういうのはできそうにありませんね」
皇帝様からのお言葉を思い出して思わず苦笑した。
忘れてはいけない契約の二つ目。
それは子供を産めというもの。今の旦那様との関係だとそのような状況にすらならないから、いつ達成出来るのか不明のまま。
これを達成出来なければ契約内容は継続のままで離縁は不可能。
「それでしたら、私にいい考えがあります……」
「え?」
考え込んでいるとボソッと椿さんから何か声が聞こえた。上手く聞き取れなくて聞き返したけど答えてはくれなかった。
「なんでもありません!さて、今日も妖討伐の依頼が来てますよ!当主様と現地集合で頑張って来てください!」
ニカッと笑って、そのまま部屋から出ていってしまった。
その様子を見ながら相変わらず元気だなと心の中で思った。
***
さわさわと静かな場所で風が優しく揺らぐ。とてもじゃないが妖が溜まる場所だとは最初見た時思えなかった。
「「“契りの名において、封印せよ!”」」
私と旦那様の声がひとつになり静かにだけど力強く辺りに響いた。
その声を聞いた“悪霊となった九尾”はしゅるしゅると旦那様の影に入っていく。
「……これで契約成立だ」
「かしこまりました。やっと封印できましたね」
やれやれとため息を着いた。
最近は妖の出る頻度が多い。それもほとんどが悪霊になっていたりなりかけていたりと人間に危害を加えようとするものばかり。
数年前までは妖は国の宝だとか言って皇帝様はとても妖の存在を大事に扱っていた。それなのに、なぜ今になってこのような妖が増えているのだろうか。
「おふたりともお見事でした。花嫁様、なかなかやりますね」



