来世まで、貴方のお傍に。


その姿を見て本当に他人に興味無いんだなとぼんやりと思った。この方が私の旦那様になる人なんだ。

改めてそう思ったけどなんだか実感がわかなくて。

流れに身を任せて、その日を過ごしていた。

***

皇帝様から伝えられた契約内容はふたつ。

その一。
妖の多いこの国に貢献し、成果をあげよ。夫婦で協力すること。

その二。
ふたつの家系は異能の力が強い。その異能の力を来世まで繋がるように後継となる男児を産み、育てよ。

……離縁など絶対に許さん。

このような内容を婚約がわかった時にお父様に聞いた。一つ目の内容は達成出来るだろう。

何せやる事は決まっているのだから。

妖と対話し、封印すること。悪さをしない妖でもそのままにしておくとろくな事にはならないことが多いため、封印して損はない。

攻撃などの力は備わってないがそれなりに私は妖が見えて会話ができる。封印もできる。

そこに旦那様の力……契約や式にすることが出来ればもう安泰だろう。ここ最近は妖の関わっている事件や事故が多い。

お父様とお姉様とやってきた仕事とほぼ同じだからこれを続けるだけ。

問題は……。

「「……」」

気持ちの良い朝の光が差し込むひとつの和室。その部屋には私と旦那様がいた。

朝餉を囲み、共に食事をしているのだが。

一言も会話をすることなく食べ終える。静まり返った和室は気持ち悪いほど何もおきない。

……本当に、この人は何を考えているのか分からない。

「当主様。そろそろお時間です」

「わかった。今行く」

旦那様が食べ終わった頃。タイミング良くふすまの向こうから旦那様の側近の声が聞こえた。

音もなく立ち上がり、私に見向きもしないまま旦那様は部屋から出ていってしまった。

「……はぁ〜……。息が詰まる」

旦那様の背中を見送った私は1人ため息を着いた。旦那様と夫婦になって数日。この調子がずっと続いていた。

“他人のまま”とは聞いたけどまさかここまで空気扱いとは。同じ空間にいるだけで苦しい。

でも表向きは夫婦として活動するため形だけでも同じ部屋で食事、睡眠を取らなければいけない。

それを決めたのは旦那様だ。

「花嫁様。お膳をお下げしますね。本日はいかがでしたか?」

朝餉を無理やり胃の中に押し込み、食べ終えると私のお世話係兼神楽家の侍女がおずおずと入ってくる。

名前は確か椿(つばき)って言っていたな。

「ありがとう。今日も変わらずですよ。仕方ありません。そういう契約で旦那様と夫婦になったのですから」

そう。

契約は皇帝様と旦那様と二重に交わしていることになる。