『お前、誰?』――朝の光と、強面イケメンと、戻らない記憶。

服もちゃんと着られたし、遊びもある程度満足できたので、兄貴の部屋に行くことにした。
もう朝の七時半なので、兄貴も起きているだろうとのことだ。

兄貴の部屋は、同じ階の四つほど隣らしい。
俺の服装をしっかり確認して、イケメンが先導してくれる。

だが、扉を開けた途端――そこに人がいた。

どうやらその人もイケメンの部屋に用事があったようで、扉に手を伸ばそうとしていたところだったらしい。

「え。……志津?」

俺の名前を呼んだその人は、俺の姿を見て一瞬呆けたあと、ものすごい勢いでイケメンの胸倉を掴んだ。

素晴らしいチンピラ具合だ。
めちゃくちゃ綺麗な人なのに、すでに五人くらい殺してそうな目をしている。

「てめぇ……可愛い志津に何した!?」

ナニはされたが、イケメン曰く一応同意の上だから、こんなに殺気を向けられるのはちょっと可哀想だ。

でも、イケメンは毛ほども怯んでおらず、その綺麗な人の手を掴んで静かに降ろさせた。
圧倒的な力の差である。

「詳しい話は中で」

イケメンはそう言いながら、俺をリビングの方へと戻した。
綺麗な人も、憮然とした表情を隠さないまま、大人しく部屋に入ってくる。

そして始まったのは、昨日の事件の詳細な話だ。

パーティーが始まる。
俺がファンから差し入れを貰う。
怪しい薬を盛られた俺が苦しむ。
イケメンが駆けつける。
イケメンの部屋で解毒薬を飲んで、ひとまず寝かせる。
薬が抜ける。

ここまでは、俺がさっきイケメンから聞いた話と全く同じだ。

だが、その後が問題だった。

「薬が抜けたとは言え、その後に何が起こるか分からない為、大事をとって一晩様子を見た。……ただ、薬の影響で記憶が曖昧らしい。自分の事も覚えていないようなので、お前に相談すべきと、今からそちらへ向かう所だったんだ」

おいおいおいおい。

ナニをやったとか、俺たちが恋人になったとか、そういう肝心な部分は一切言わないつもりか!?

お前……さっき、俺のことが好きって言ったよな……!?