『お前、誰?』――朝の光と、強面イケメンと、戻らない記憶。

若干の現実逃避としてイケメンの姿絵も見せてもらった。

……が、俺のものに対して、十分の一くらいの量しかない。
イケメンよ、お前はやっぱりストーカーか。

その姿絵を見て、俺が「カッコイイな」と素直に見惚れていたら、隣でイケメンがソワソワとし始めた。

何というか、見た目に反して結構可愛い人である。

イケメンが剣技の試合で優勝したときの筋肉に惚れ惚れしていたら、ピーピーと洗浄具が鳴った。

イケメンはそそくさと立ち上がって洗浄具に向かう。
恐らく俺の服だと思ったので、俺もイケメンの後を追った。

移動しながら眺めるイケメンの部屋は、どこもかしこも綺麗だ。
しっかり整頓され、掃除も行き届いている。

(こいつ、立派なイクメンになりそうだな……)

と思ったが、駄目だ。こいつは俺に惚れている同性愛者だ。育児する児が生まれない。
これは世界の損失だろ。

イケメンは手際よく俺の服を乾燥箱に移し替えて、一緒に洗浄していたバスタオルを干した。
手慣れたその仕草も、女が見たらイチコロだろうに。本当にもったいない話だ。

イケメンは、一連の作業が終わって初めて俺が後ろにいることに気づいたらしく、めちゃくちゃ狼狽(うろた)えていた。

何というか。
イケメンの行動が、いちいち可愛く感じてしまう。
……俺も何かの病だろうか。残念な話である。

イケメンはそのあとも、「座学で学ぶ内容はこんな感じだ」と学生時代の教科書を見せてくれたり、手際よく朝食を用意してくれたり、おすすめの読本なんかを見せてくれたりした。

教科書の内容は、特に問題なく理解できた。
どれも「知っている」と思えたので、これなら仕事も大丈夫そうだ。

そして朝食は、信じられないほど美味(うま)かった。
「毎日お前の料理が食べたい」とか、どこのプロポーズだよと自分で突っ込みたくなるほどだ。

読本の題名などはどれも記憶になかったが、どれも興味を引くようなものばかりだった。
きっと、俺はイケメンと根本的な趣味が合うんだと思う。

乾燥箱にかけた服がちょっと冷めるまで、俺はイケメンから至れり尽くせりの惜しみない接待をしてもらった。

服を着替えてからも、気になった盤上遊戯を二人で一緒にやった。

戦略的なやつだったんだが、イケメンはめちゃくちゃ強かった。
赤子の手をひねるようにボコボコにされるのは、何というか微妙な気分になったりもしたが……。

それでも、純粋に楽しい時間を過ごした。

イケメンとずっと遊んでいたい。
――そう思える程度には。