『お前、誰?』――朝の光と、強面イケメンと、戻らない記憶。

俺の生い立ちを聞くと、未亡人の母親が貴族に見初められた男爵家の養子らしい。
その男爵様にも息子がいて、その義理の兄貴が彼と同期のなのだとか。

んで、その兄貴は俺をめちゃくちゃ溺愛しているらしい。

じゃあ、その人に会って、とりあえず事情を説明しておくべきかと立ち上がった。
だが、イケメンに結構な勢いで止められる。

「……そんな格好で行ったら、俺があいつに殺される」

確かに、一理ある。
洗浄具が鳴るまで、もうちょい詳しく俺自身の事を聞くことにした。

なんでも、イケメンと兄貴はバチバチの対立関係にあるようで、それもあって彼は今まで俺に告白できなかったという。さながら、ロミオとジュリエットのようなものだ。

ついでに、さっき出てきた『ファン』の詳しい説明もしてもらった。

平民上がりの男爵家の養子ということで、先輩たちからあまり好ましく思われていなかった俺だが、どうも見た目が良くて剣技に優れていたため、年下の団員達には「格好いい!」と大人気だったそうだ。

だから、年下の男の子たちがキャッキャウフフと周りにまとわりついていたらしいのだが……。

「――で、志津は、声をかけてくる奴らを、手当たり次第に食ってた」

……ちょっと待て。一旦、話を中断したい。
落ち着け俺。餅つけ。

食っていた。
食っていたって、つまりは……。そういう、その、あれか!?

男の子を手当たり次第って、何なんだよ過去の俺。怖すぎるにもほどがある。
ってか、お前もこんなイケメンのくせに、なんでそんなとんでもない奴に惚れてるんだよ!

俺が一人で脳内大パニックを起こして話を整理している間に、イケメンは何やら姿絵の束を持ってきた。

「言葉で聞くより、見た方が早いだろう。普段の志津の記録だ。色んな大会で活躍していた時の姿絵もある」

お前……それは、一体何のために持っていたんだ?
(ストーカーか?)

恐る恐るその束を見てみると、絵の中の俺は、確かに手当たり次第に周囲に可愛い子をはべらせるチャラ男オーラが漂っていた。
というか、公衆の面前で男の子たちにベタベタとスキンシップ三昧である。やべぇ奴だ。

結局、その姿絵を見て得たものは、「俺がちゃんと自分の顔を認識できた」という事実だけだった。

――俺が記憶を失ったのは、「今までの行いを反省しろ」という、神の思し召しかもしれない。