『お前、誰?』――朝の光と、強面イケメンと、戻らない記憶。

イケメンは、俺のどもりながらの説明を静かに聞いてくれた。

すぐさま服を着て、俺にも大きめのワイシャツを貸してくれる。
なんでも、昨日着ていた俺の服は、下着も含めてさっき洗浄具に投入されたらしい。

結果、お決まりの「彼シャツ」状態ではあるが、一応落ち着いて話ができる状態にはなった。……と思う。

ソファで背筋を伸ばして座るイケメンは、真面目を絵にかいたような顔で俺を見つめた。

「――失礼した。まずは、君の名前からだな」

彼は、俺の素性を淡々と教えてくれた。
そこに、さっきまでの恋人感はさっぱりない。

俺の名前は、時津(ときつ)志津(しづ)
騎士団入隊二年生で、ちょうど昨日が二十五歳の誕生日だったらしい。

「そして昨夜、俺が君に告白し、了承してもらった。……その後、そういう関係に」

イケメンは歯切れ悪くそう告げる。
告白して速攻でベッドインだなんて、なんて肉食系なんだ。

ちなみに、ここは騎士団の寮にある彼の部屋。
既婚者以外の団員はこの寮で暮らしていて、俺の部屋は下の階にあるらしい。

イケメンは騎士団三年目で、俺にとっては直属の上司に当たるそうだ。
上司と部下とか、今後の仕事がしにくくなるだろうが。

「……実は、入団直後からずっと君に惚れていた。だが、君は俺に抱かれるタイプではなかったので、なかなか踏み出せなかったんだ」

イケメンが申し訳なさそうに眉を寄せる。
それって、俺が抱く方だったっていう意味だよな。

じゃあ、何でいきなり俺は、あんな……あんなバズーカを?

「昨日、王宮のパーティ警備中に、君がファンからの差し入れを受け取っていたんだ。それを、君が不用意に仕事中に口にするから、ひとこと注意をしようと追いかけたら」

それに媚薬が盛られていたらしく、俺が倒れそうになったところを彼が助けてくれたという。
(ってか、ファンって何……?いや、ひとまず口は挟むまい)

「仕事を続ける訳にも行かなかったので、ひとまず薬の効果が抜けるまでと思って、手伝って眠らせたんだ。五時間ほど経った頃か。目を覚まして薬が抜けているようだったから、我慢できなくなって告白した。君も」

イケメンは、躊躇いつつも言葉を続けた。

「ずっと好きだったと。そう言ってくれた」

小さく零す言葉に、なんだか悪いことをしたような気がしてくる。

「それで、俺も、その、理性が持たず。その、調子に乗って何度も……すまない」

なるほど。
事情を聴く限り、彼は悪い奴ではなさそうだ。

この話をする間も、いちいち俺の顔色をうかがっては泣きそうな顔ばかりしていた。

つまり。
その媚薬とやらが悪さして、俺は記憶を失ってしまったのだろうか。

まあ、なんとなくの事情はわかった。
上司としてなら、このイケメンを信頼してやっても良いかもしれない。そう思えた。