『お前、誰?』――朝の光と、強面イケメンと、戻らない記憶。

俺が固まっている間にも、イケメンは俺の髪に顔を埋めたり、背中や腰を撫でてきたりする。

「起き抜けに志津がいるとか、幸せすぎる」

などと甘い声で(のたま)ったりしてきた。

これは、非常に言い出しにくい。
こんなにあからさまに恋人感を出してくる奴に、「お前、誰?」とか言えるわけがない。

いや、言わざるを得まい。だって、マジで何もわからないのだから。
よし。言うぞ。男は度胸だ。

「あ、悪い。志津、昨日は可愛く啼きっぱなしだったから、喉乾いてるよな」

うわ。俺にこのミッションはハードル高すぎやしないだろうか。

俺が度胸を見せる前に、イケメンは甘い言葉を残して、ベッドからあっさりと出て行ってしまった。
最後にサラッと頭を撫でていくあたり、慣れている。

ってか、当然のように歩いているけれど、あの人、真っ裸なんですけど。

男らしい引き締まったケツ筋に、俺はキュンキュンするより男として憧れてしまう。マジでやべぇな、あのケツ。

イケメンが持ってきてくれた水を大人しく飲みながら、俺は戻ってきたイケメンの息子をガン見していた。

何なんだ、あの存在感は。バズーカか。

俺のケツは昨夜、こんな凶器を収納したというのか。恐ろしすぎる。
ってか、こんなに堂々と裸を見せつけるイケメンが恐ろしい。

しかも、じっと見ていたら、なんだか元気になってきたような気がする。怖い。

このまま何も言わずにいたら、俺は自分の名前すら危ういまま、このイケメンと次のラウンドに入ってしまう!

「ぅあのっさっ……!」

震えるわ、つっかえるわ、情けなさ全開ではあるが、俺は何とか声を絞り出した。

――◇――

どもりまくりはしたが、およその状況は伝えられたと思う。

記憶がなくて、自分の名前も現状も理解できていないこと。
お前のこともわからないこと。
ちょっと落ち着いて話したいので、とりあえず服を着てほしいこと。

そして、最も大切なこと。

――「一旦、まずはお知り合いから始めて頂けませんか」と。