『お前、誰?』――朝の光と、強面イケメンと、戻らない記憶。

なんやかんやと最初は怖くはあったが、彼らは流石に俺のファンをやっているだけあって、持っている『志津様情報』の量が半端じゃなかった。

俺の入団時から現在までの、色々な話を聞かせてくれたのだ。

俺が「男でも良いや」と思った過程。ファンとの関係。日々の行動。友人関係。団内での仕事に対する姿勢……。

時々、誰かが持っている俺の姿絵を見せてもらいながら、色々な事を教えてくれた。

だが最終的に、朝の俺の寝顔とか、行為の最中の俺の姿絵とか、流石に危うすぎる姿絵が多発し始めたので、慌てて強制終了させた。

――どうやら、俺が過去にファンの子らを食い散らかしてた、というのは事実らしい。恐ろしい。

でも、「そんな不誠実な真似をしていて、本当にごめん」と頭を下げようとしたら、それを言う前に一番偉そうな子にピシャリと止められた。

なんでも、最初に俺と彼らとの間で交わした約束があるらしい。

『俺にはずっと好きな人がいるから、お前たちに同じ想いは返せない。だけど、ただ身体を重ねて愉しむだけなら、むしろお願いしたい』

その条件に心から同意した子だけが、俺の相手をしていたんだ、と。

「だから志津様、あなたが謝る必要なんてどこにもありませんし、不誠実なのは同意したこちらも一緒です。むしろ、悪いのはこの悪習にあなたを染めてしまったこちら側で、染まってしまったあなたじゃありませんから」

ファンの子らが、あまりにも優しくて、健気で可愛い良い子達だったから、俺は思わずその場に立ち上がっていた。

「ホント、俺の為に色々ありがとう。……これからもよろしく頼む。よし、ハグしよ」

両手を広げて待てば、一番偉そうながまず嬉しそうに俺の胸へと飛び込んできてくれた。

「記憶が無いなんて、信じられません。……先日の志津様を讃える会でも、貴方は全く同じ言葉を私たちにかけて下さいました」

ちょっと涙声になっているその子の頭を「よしよし」と撫でていたら、他の二人も目に涙を溜めて立ち上がっていた。

ちょいちょいと手招きしてやると、二人も遠慮がちに抱き付いてくる。

三人まとめてギュッと力強く抱き締めて、あぁ、これが友情というやつか、と心地いい温もりを堪能した。

「――そろそろ、昼休憩も終わる。お前達はいい加減、仕事に戻れ」

その時、背後から非常に不機嫌そうな圭人の声が響き、俺の腕の中から三人があっさりと引き摺り出された。

三人は「ぶぅぶぅ」と分かりやすく文句を言っていたが、俺が「またね」と笑顔で手を振って声を掛けたら、一転して元気良く返事をして帰っていった。

本当に素直で可愛い奴らだ。確かに、過去の俺が可愛がりたくなるのもよく分かる。

……と、そんなふうに彼らをちょっとデレデレして見送っていたからだろうか。
振り返ると、圭人が物凄く拗ねた顔をしてこちらを見ていた。

何だよ、その顔。……やっぱ、こいつが一番可愛いわ。

仕方が無いから、圭人を抱き締めて「なでなで」してやったら、大型犬が尻尾を千切れんばかりに振り回してんじゃないかって位の喜びようだった。

全く。

――割ともう、俺はお前のだって、心の中では思っちゃっているよ。