14日後、高砂くんとのキスを僕はとめたい。

ガヤガヤ ザワザワ

「昼メシの後の体育ってマジで最悪だよな」

「そうそう、なんでバスケなんだよ」

「もう胃がたっぷんたっぷんいってるよ」

「それ分かるわぁ。ちょっと横で休憩してたら今度は眠気との戦いだしさ」

5時限目は体育でバスケ。
これが結構キツイ。まだバレーボールの方が体に優しいと思うんだけどなぁ。
追いかけ回されて、ヘトヘトになってからのメンバーチェンジ。
ボ〜ッと眺めていたら眠くて仕方なくなってきた。


「なんだよ青、お前はまだ眠そうだな〜」

「うん、実は昨日あんまり眠れなかったんだよなぁ」

「そうなの?俺も寝るの遅かったんだよ。なんならメールしてくれたらよかったのに」

「えぇ〜っ、ウッチーと夜中にメールって。色気ないからイヤだな」

「何だよそれ、失礼な…じゃあ、何ならいいんだよ」

「ははは、冗談だよ、冗談!」

少し休憩したらもう動きたくなくなってきた。
ここには、だらけた男子が四人ほど転がっている。

ダンダンダンッ

ボールをドリブルする音が体育館に響きだした。

「おーい、こっちだこっち、パスパス」

こういう時でもスポーツが得意なヤツって頑張れるから尊敬する。
それに比べて僕達は…なんだかんだグダグダしてたらあっという間に終わりの時間がきてしまった。

「さっさとボール片付けて教室に戻ろうぜ」

「あぁ、そうだな」

「僕、ちょっと…トイレ行ってくるよ」

「分かった。じゃあ、俺達は先に教室に戻ってるからなぁ〜」

「うん、すぐ戻るよ」

取り敢えずトイレ、トイレっと
その前に体育館シューズをしまわないと…。


「ねえねえ、両思いになれるアイテムの話って知ってる?」

「知ってる〜!凄い有名だよね」

「とくにガラス玉…でしょ?」

「そうそう、それ!」

ん……?

向こうの下駄箱で女子達の話し声が聞こえる。


「でもさあ、気を付けないと恋が叶わないらしいよ」

「えっ、そうなの?それ知らないんだけど…
どー言うこと?」

「ガラス玉が曇ると恋が近づいてるサインなんだって、でもヒビがはいると叶わないらしいよ」

「へぇ〜」


えっ……ちょっと待って。

何、その話?

そっち。
僕が知りたいのはそっちだ!
恋が叶わない方。
って…恋って言っちゃってるし。
いや、僕の場合は恋とは違う。
恋とは違う…よな?
でもガラス玉が曇るって。
そんな事あるの?

誰と誰が話してるんだろ…。
下駄箱の角からそっと顔を出した。
初めて見る顔…知らないなぁ。

でも、その話しもっと聞きたい。

もう少しだけ…。

バレないようにあと一歩だけ近づこう。



あれ……。
あそこにいるのって
宮代くん?
コソコソして何やってるんだ。
しかもなんで女子の後をついていってるんだろう?

…まだ見てる。
なんなんだ、あいつは。

まさか高砂くんに見られてるなんて思いもしない僕。
結局、さっきの女子は何年生なのかも分からなかった…。
一日中占いのアイテムとやらの事が気になって
逆に高砂くんを意識せずに済んだかもしれない。
コレはコレでよかった気がする。
僕の頭の中はガラス玉で一杯なんだ。


******




「あお、なぁ〜青ってば!」

「はっ、えっ何?」

「何…じゃないよ、さっきから呼んでるのに」

「ごっ、ごめん、で何だった?」

「今日さ、このまま皆んなでカラオケに行こうって話してるんだけど青も行くだろ?」

「今日……?
あーーーっごめん、今日はちょっと用事があるから無理かも」

「そーなの?」

「次は絶対行くから、また誘って。ごめん」

さっきの下駄箱での話し。
お店の名前はなんとかゲット出来た。
盗み聞きは良くない…。
分かってるけど、
僕なりによくやったと思う。

あんな大声で話してたんだから聞いて欲しかったって思う事にしよう。

「じゃあなぁ〜また明日」

「お〜っ」

下駄箱までダッシュで走って校門を抜けた。
女子達から聞いた(盗み聞きしたんだけど)お店へ急がないと!
今は一刻を争うんだから。


「えっと、この辺のはずなんだけどなぁ…何処にあるんだろう?」

スマホで地図を何度も見直す。
さっきもここ通らなかったっけ?
あっ、反対側か。

あっ…。
あった。
…えっ、ここ?
一瞬通り過ぎそうになった。

もっとファンシーで可愛らしい系かと思ってたのにどうりで分からないはずだ。
なんだろう…。
本当に効きそうな店構え。


カランカラン


「いらっしゃいませ」

うわぁ、ストラップに水晶とかブレスレットまで色々あるんだ。
目が泳いじゃうな。
どれを選ぶのが正解なんだろう?

「恋のお守りをお探しですか?」
キョロキョロしていた僕にお店の人が声をかけてくれた。

「…いや、恋じゃなくて…」

「恋じゃない…。じゃあ、運命の方ですか?」

「恋じゃ無くて、運命でもなくて…。回避したい方なんです」

「回避…??」
店員さんが少し困った顔をしている。

「えっとお、両思いになりたいとかではなくて?」

「はい、恋を避けたいんです」

「恋を避けたい方は…初めてかもしれません」

「お願いします。僕に合うものってありますか?」

「うーん、それなら、これですね。
恋が近づくと少しずつ曇るんですよ。
避けると言うよりは目印になる感じ…ですかね」

「へぇ、おもしろい」
きっとこれの事だ。下駄箱で女子達が話してたお守りって。

「避けたいなら、曇らないようにして下さい」

「はい…絶対に曇らせません。僕、これにします」



「ありがとうございました。
もし迷ったらまたいらして下さいね。
ガラス玉はときどき、持ち主より正直になりますから」

「……?…へえ〜」
ガラス玉は正直なのか…。
なら、曇らなければ勝ちって事だよな!


お店を出てポケットにガラス玉を忍ばせた。
少し冷んやりして片手に収まる。
最強アイテムゲットしたぞぉ〜。
思わずニヤリとほくそ笑んでしまった。


「宮代くん…」

「へっ…?」
急に名前を呼ばれて振り返った。

「何、それ?」

まさか。
「高砂……くん…?」

「今ポケットにしまったやつ、ここで買ったの?」

「いや、いや、そんな事よりなんでここにいるの?」

「途中で宮代くんを見かけて。歩きスマホは危ないよって注意しようと思ってついてきたんだ」

「ずっと後ろにいたってこと…?」

「そうだけどなに?
まぁ、ずっとってわけでも無いんだけどね」

「でも僕が出てくるまで、ここで待ってたってことだよね?」

「だってそんなに時間経ってないし」

「何分待ってたんだよ!」

「なんでムキになってんの…」

終わった。
全部見られてたのか?
いつ、何処から付けられてた?
全然知らなかった。
ははは。
もう笑うしかない…。

「なあ、一つ聞いてもいい」

「えーーっ、なに?」

「それって大事な物?」

「そうだよ。すご〜〜く大事な物だよ」

「ふーん、そうなんだ。俺も店の中を見てみようかなあ」

「ダメっ!」

「へっ?」

「店には入ったらダメだよ!ほら、早く行こう。こっち、こっちだってば」

「ちょっと、何やって…押すなって」

「とにかく今日は帰ろう、ねっ。早く帰ろうよ」

「分かったよ」

何がなんでも店に入れるわけにはいかないんだ。
多少強引でも背に腹はかえられない。
本当は羽交い締めにしてでも連れて帰りたかったけど、これでも遠慮した方だ。

正直、高砂くんの家がどこかなんて知らない。
『俺はこっちだから』と別れた方向からして隣町なのかなぁって程度。
本当なら『家ってどこ?』って聞くんだろうけど今は余計な事は聞かない方がいい。
聞いたばかりに夢が近づく事だってあるんだから。


あ〜あ〜もう…疲れた。
家に着いたらコーラでも一気飲みするか。

「おかえり〜」

「ただいま…」

「なに冴えない顔してんのよ」

「そお?気のせいじゃない?」

「ふーーん、まぁ、いいや。最近夢は見てるの?」

「うっ…見たり見なかったり…」

「朝5時の夢はちゃんと報告しに行きなさいよ」

「分かってるよ」


バタンッ

「あーあ、行っちゃった。お年頃なのね…」


一番聞いて欲しくないタイミングでわざわざ聞いてくるのってなんでお母さんなんだろ…。

「ふう〜っ」

ポケットからさっき買ったガラス玉を取り出して眺めてみた。
本当にこの透明なガラス玉が曇るのかな?
いや、毎日磨いて毎日確認する。

…にしても。
なんで高砂くんがあそこに。
お店に入った所を見られてたとは思ってもみなかった。

ルール1 二人きりにならない
ルール2 目を合わせない

さっき二人きりになっちゃったし、思いっきり高砂君の目、見ちゃったし…。

でもまだまだ大丈夫!

あと11日
264時間

ぜんぜん余裕。
…たぶん。