14日後、高砂くんとのキスを僕はとめたい。



今日は一度も高砂くんと目が合っていない。

昨日は…見過ぎたからな。

僕は見たつもりなんてなかったけど、高砂くんがそう言うんだから、そうなんだろう…。
これって地味に恥ずかしい。

おかげで授業に集中出来た。

よしよし
このまま帰れば何事もなく終われそう。

これなら明日からも余裕でやり過ごせるはず。


ガラガラガラッ


「みんな席について!ほら、そこ、静かに。帰りのホームルームを始める前にみんなにやって貰いたい事がある・・・」


担任が黒板にクラスメイト全員の名前を書き出した。

ん……先生、何やってんだろ?

名前の下に真っ直ぐ線を引っ張ってるけど。

「一人一本好きな所に線を入れろ。これから席替えするぞ」

「!?はっ、まじで?」


アミダで席替え決めるつもりとか…。
なんで誰も何も言わないの?
みんなは賛成な訳?

そうか、2年になって初めての席替えだし、去年まで3年を担当してた先生だから言いづらいってことか…。
くっそぉ〜。
この一本でもしかしたら僕の運命が左右されるかもしれないのに。


「おい、青〜。いい加減にしろよ。そろそろ決めてくれ」

「分かってるよ、急かさないでくれって。
僕マジなんだから…」

「マジって…席替えするだけじゃん」

「よし!ここだ」


「・・・・・・・」

「ねえねえ、宮代くん、隣の席になったねー。これから宜しくね」

「あぁ、木戸さん。僕の隣なんだ。宜しく」

って…隣の席はこの際問題じゃない!
問題なのはー。

「まさか…俺が宮代くんの前の席になるなんて思わなった」

「はははは、僕もまさか高砂くんの後ろの席になるなんて思わなかったよ」

あぁ。
終わりだ。
終わったああぁぁぁ…。

なんでよりによって高砂くんの後ろなんだよぉぉ。

振り向かれたら防御率0%じゃん…。
僕の平和な高校生活…終了!

「今日も俺の事見るつもり?」

「は??」

「まあ、背中だけなら見てもいいけど」

「別に見てなんか…」
背中だけならいいとかって何?


「 宮代くんってさ」

「分かったから、もう見ないでよ…」

「俺の事は見過ぎるくらい見るのに見られるのは嫌なんだ」

「だから、それには、理由が」

「理由って何?」

「それは…言えない」

「なにそれ?変なやつだな」

「高砂くんはもっと怖いかと思ってたよ」

「よく言われる」

「へえ〜よく言われるんだ…」

「ねえ、その手首の赤いミサンガってお守り?
今までしてなかったよな?」

「なんで知ってるの?」

おかしい…。
高砂くんってもっとこう無口で近寄りがたいはず!
なんかイメージが随分違う。

「それって恋のお守り?それとも魔除け?」

「これは・・・魔除けだよ、魔除け」

「ねぇ、貸して」

「えっ……」

何をするつもりなのか分からないまま手首を掴まれた。

「なっ…なに?」

「さっきから気になってたんだけど紐が解けそうだよ…ほら」

「えっ、待って!なにやって…」

「これでよし。解けないように強めに結んでおいたよ」

「高砂くん、なんて事を…」

「あれ、ダメだった?」

僕の…
夢を見た相手(君だよ、高砂くん!)と接触しない為の大切なお守り。
赤いミサンガが僕の手首にしっかりと結ばれてしまった。
しかも、高砂くんの手で。

おかしいなぁ。
ほどけそうには見えなかったんだけど。


「ううん、ありがとう」

……。
いや、
ダメだろおおぉぉぉ

でも、ダメなんて言えない。親切でやってくれたんだから。

「静かに〜!!帰りのホームルーム始めるぞ」


なんでこうなるかなぁ?
これから毎日高砂くんの背中を見て過ごすんだよ。頼むからあんまり振り向かないでくれよ。

こんなんで本当に大丈夫なんだろうか?
僕の不意をついてくる高砂くんのアクションをどこまでかわせるか…。
クールな顔して意外と強者なのかもしれない。
これからは気をつけないと。


【 帰り道 】


学校を出て駐輪場を曲がった所で高砂くんが前を歩いているのに気が付いた。

あぁ、そうかこの道を歩いて帰ってたのか。
新たな発見
こっちの道を帰っていく生徒ってあんまりいないんだよな。
僕自身、帰りは友達に合わせるから違う道で帰る事が多い。


[高砂くん回避の為のルール1]
二人きりにならない。

そうだった!二人きりになっちゃダメなんだ
高砂君が前で僕が後ろを歩くこの微妙な距離感。
どうしよう。
抜かす…?
いや、抜かしたら気まずくないか。

一定の距離をキープしてずっと後ろを歩いてようかな…。
まてまて。
それってストーカーみたいじゃん。
ダメダメダメ。
それはやっちゃダメなやつだ。

なら同じ速度で歩くとか。
ずっと横並び?
何、それ?
怖い…!

そうだ!!
戻ればいいんだ。
何でこんな簡単なことを思いつかなかったんだろう?
戻ろ、戻ろっと…。
せっかくここまで来たけど仕方ない。

クルッと向きを変えてもと来た道を帰ろうとしたとき、ふと僕の目に飛び込んできたものがある。

おっ、この左に抜ける道って・・。
まさにこれって
裏道じゃん!
絶対この道向こうに繋がってる。

そうだよ!
ここを通れば回避出来るんじゃぁ…。
スゲェ〜僕、よく気がついた。
よし、よし、ここを曲がろう。
ちょっと道が細いけど行こうと思えば通れる。
どうせ今日だけだし、無理無理でも行ってしまえ。

わおぉぉ〜抜けた。

マジで 天才!

助かったぁ。

「ふぅ〜っ」

全身の緊張が一気に抜けた。
やった、やり切った。爽快感が駆け抜ける。

「なぁ、何してんの?」
背後から突然声をかけられて、飛び上がりそうになった。

「はっ?…高砂くん・・な、なんで?」

「なんでって…なんで裏道を使ってるの?
ここメチャ細いから普通は通らないでしょ」

「えーーっとぉ」

「近道なの?」

「うん、それ!」

「嘘だね」

「は ? なんで」

「ウソだってすぐ分かるよ。
お前、分かりやすすぎ」

「それよりなんで僕が曲がったって分かったの?」

「なんで気づかれないと思うわけ?
俺、振り向いてただろ?」

振り向いてた?
いつ?
じゃあ、僕って高砂くんから見えてたの?
僕ってキョドってなかったよね?
もしかして、普通に『じゃあね』って抜かせばよかっただけの話し?
だったら泣く。

「家ってあっちの方だったよな?」

「あれ〜?どこだったかなぁ〜?」

「なに、それ。嘘が下手すぎ。とぼけるつもり?」

だから、そんなに真っ直ぐに僕を見ないでくれって。
そう言いたくても言えない…言葉を飲み込んでしまう。
だってあんな夢を見たなんて言えるわけないし。
言ったってキモ悪がられるだけだし。

あと残り12日
288時間

なんでだよぉ……。
時間が減っていく。