昨日あげた羅針盤のチャームの威力が半端なかった気がしてならないんだけど…。
なんでだ?
僕は高砂くんの運命の人が現れて欲しくて渡したんだよ。
だってお店の人もそう言ってたし。
なのに相合い傘からの肩を抱かれての名前呼び…。
こんなことでどうする、自分。
集中して!
僕の初めてが高砂くんで、
高砂くんの初めてが僕。
僕は夢を知っているから最悪覚悟も出来る…。
でも高砂くんはどうなんだ?
僕とキスするなんてショックで寝込むかもしれない…。
僕だけなんだ、僕だけが回避してあげられる。
やっぱり学校が終わってからお店に行って、店員さんにちゃんと確認しよう。
うん、絶対それがいい。
僕の決意は固まった。
そう思ったら一刻も早くお店にいきたい感情が溢れて…。
溢れすぎてるのかな?
なんか頭がクラクラする。
体の節々も痛くなってきたよーな?
ちょっとだけ熱っぽいかな?
なんかおかしいぞ。
もしかしたら昨日、雨にあたったせいで風邪をひいたのかもしれない。
いや、まだ高校生なんだからたとえ風邪をひいたとしても気力で乗り切れる自信はある!
どーにでもなるだろう。
熱さえ測らなければ気のせいで乗り切れる。
それが高校生だ。
キーンコーンカーンコーン
えっ、もう昼か…。
「やっと昼飯〜、腹ぺこぺこだよ。今日の弁当はなにかなぁ?」
「俺、お茶持ってくるの忘れた〜。自販機に買いに行ってくるわ」
「うん、分かった。ついでに俺の分も買ってきてよ」
みんなは腹ペコで昼が待ち遠しかったみたいだけど…。
僕、あんまりお腹が空いてないかもしれない。
せっかくお母さんが作ってくれたんだし、残すのは申し訳ないよなぁ…弁当箱を開けてご飯を口に運んでみたけど、ひと口食べてもう無理だと思った。
「あれ、青…腹減ってないの?弁当あんまり食べてないじゃん」
「うーん、なんか食欲ないっていうか…眠いんだよね」
「なんだよ、調子悪いの?」
「う〜〜ん、悪いって言えばそうなんだけどさ……。やっぱりちょっと寝るわ。ご馳走様」
「おお、そうか…」
弁当箱をさっさとカバンの中にしまって少しだけ寝ることにした。
机の上に突っ伏したらすぐに眠気が襲ってきた。
ダメだ、勝手に瞼が閉じていく。
教室の騒音がやけに心地いい。
僕はそのまま眠りについた。
どれくらい寝てたんだろう?
腕の痺れで目が覚めた。
「うーーん」
なんだか頭がぼんやりする。
顔を両手でこすって気を引き締めてみた。
あれ…。
高砂くんが僕の前の席で本を読んでる。
さっき誰かがそばに来た気配がしたけど高砂くんだったのかなぁ?
全然気づかなかったな。
ぼんやりと後ろ姿を眺めていたら急にこっちに振り向いた。
「昨日、雨で濡れただろ?ちゃんと体とか乾かした?」
「僕のこと?あぁ、ちゃんと乾かしたよ」
「ならいいんだけど。無理すんなよ」
「うん、大丈夫だよ」
えっ、なにが言いたかったのかな?
でも少し寝たらちょっとは楽になった気がするんだけど。
ガラガラッ
「ほら、席について!今日は小テストやるぞぉ」
「えっーーーっ、なんでだよぉ。聞いてないよ」
「だから小テストなんだよ。つべこべ言わない。
コレからプリントを配るから後ろに回して」
「あ〜ぁ、めんどくさ」
昼ごはんの後の5時限目は英語。
忘れた頃にいつも単語の小テストをするのがこの先生のルーティンだ。
文句をいいつつもちゃんと前からプリントが回ってくるのはみんなが真面目な証拠だと思う。
僕にも高砂くんからプリントが回ってきた。
「はい」
「ありがとう」
「なぁ……」
「なに?」
急に真面目な顔で話しかけられたからちょっと驚いてしまった。
「あれ、宮代くん!」
隣の席の木戸さんが驚いたように僕の顔を覗き込んできた。
「なっ……何?」
「顔色、めっちゃ悪いよ」
「えっ、僕?」
「そうだよ、絶対保健室に行った方がいいよ。
気分が悪いとかない?先生に言ってあげるよ」
「そんなに…?」
「うん。なんなら私が保健室まで付き添うよ」
マジでか…。
一瞬で感じとるなんてやっぱり女子は将来のお母さん候補だな…なんて感心してる場合じゃない。
そんなことを言われたら一気に病気になった気がする。
「先生ー、宮代くん体調が悪いみたいです」
「えっ、宮代…?」
大丈夫か?と言いながら先生が僕の様子を確認するように近づいて来た。
「あ〜っ、本当だな。真っ青じゃないか…。
熱でもあるんじゃないのか?保健室まで行けるか?」
先生もそんなふうに思うってことは、相当顔色が悪いってことだよな?
一気に気が滅入ってくる。
意外と人の言葉につられる自分がそこにいるのに気付いてしまった。
ガタッ
「俺が連れて行きます」
はっ・・・?
高砂くん
なっ、なんで?
「ほら、青、保健室いくよ。歩けるか?」
「う…うん」
手首を掴まれて教室の外に連れ出された。
「やだぁ、高砂くんカッコいい〜」
「私も一緒に保健室に連れてって欲しいなぁ〜」
「でも高砂くんってあんな事するんだぁ〜意外」
教室の中がにわかに賑やかになったのが聞こえてきた。
「はいはい、そこの女子たち静かにー。
気持ちは分かるが小テストの事を思い出せ。
今からスタートするぞ」
「さいあく〜」
静かになった教室を後に僕達2人は保健室に向かって歩き出した。
【 保健室 】
ガラッ
「失礼します」
辺りを見回すけど静まり返っていて人の気配がない。
カーテンも開いたままだ。
「あれ…保健室の先生がいないみたいだけど。
どっか行ってるのかな?」
とりあえず中に先客がいないか確認するためにベッドの所まで歩いて行った。
良かった。
ベッドには誰も寝ていない。
さっきまでは平気だと思っていたのにまっさらなベットを見た途端、眠気に襲われそうだ。
「ねぇ高砂くん、僕1人でも大丈夫だけど…」
「まともに歩けなかったのに…?」
「あぁ、そうだっけ…?じゃあ少しだけ横になってもいいかな?」
「寝てろよ。俺は先生を探してくるから」
「ありがとう、ごめんね」
高砂くんは先生を探しに保健室から出て行った。
「よいしょっと」
ゆっくりとベッドに腰をおろした。
うわぁ〜、保健室のベッドって初めて寝たかも。
やっぱり横になると楽だー。
でも何も言わずに勝手に寝てよかったのかな…。
こんなはずじゃなかったのにベッドに体を預けた瞬間、全身の力が抜けた。
まぶたが急に重くなる。
ダメだ、まだ寝たらダメだって。
でも眠くなって…。
スーーッ スーーッ
ガラッ…
「先生どこに行ったんだろう…。ごめん、見つけられなかったよ」
って、もう寝てる。
そんなに体調わるかったんだ。
こんなに無防備に寝ちゃって…大丈夫なのか?
熱…あるのかな?
おでこに手をのせてみた。
ちょっと熱いかも。
熱さまシートなんてさすがにおいてないよな。
にしても……家族以外の寝顔なんて初めて見たかも。
いつも元気よく笑ってるけど
こんなあどけない顔してたんだ。
ふっ……かわいいな。
よく見るとまつ毛長いし。
おでこを触ったから前髪が乱れてしまった。
ヤバい。なんとなく整えてみるか。
ガラガラッ
「あら、どうしたの?」
突然扉が開いたかと思ったら保健室の先生が戻ってきた。
「あっ、熱があるみたいで…。
さっき探しにいったんですけど先生がどこにいるのか分からなくて」
「そうなの?ごめんなさいね。もういるからあなたは教室に戻っていいわよ。
にしても気持ち良さそうに寝てるわね。
そこの用紙に寝てる子の学年と名前だけ書いておいてね」
「はい。わかりました。…じゃあ、俺は教室に戻ります」
「宮代くん、宮代くん」
「・・・・・・・・」
「宮代くん、起きれる?」
ガバッ
「へっ…?」
「あっ、起きた」
「・・・・・」
「体調はまだすぐれないかな?」
「僕、寝ちゃってたのか」
「ぐっすり寝てたわよ。起こすのはかわいそうだったけど、起こさないわけにもいかないしね。
もうすぐ帰りのホームルームの時間だと思うから一旦教室に戻りなさいね」
「そんなに寝てたんですか…うわぁ」
「もしかして疲れてたのかな。ちゃんと睡眠は取ってる?
一緒に来てたお友達、心配そうにしてたわよ。いいわね〜」
「友達…?」
「同じクラスでしょ?高砂くんって言ってたかな」
「ああっ、高砂くん」
「大丈夫だから教室に戻りなさいって言ってるのに心配で側にいたそうだったわよ」
「はっ?そう…なんですか」
「とりあえず今日は無理せずにゆっくり休むか、病院で一度診てもらうか…それはあなたに任せるから。」
「はい、ありがとうございました」
保健室をでて急いで教室に戻った。
まだホームルームの前でちょうどいいタイミングで起こしてくれた保健室の先生に感謝だ。
「ただいま〜」
「おっ、青じゃん、やっと戻って来れたんだ。
体はもう大丈夫なの?」
ウッチーが僕に気付いて声をかけてくれた。
「うん、寝たら随分スッキリしたよ。って言うか起こされなかったらまだ寝てたかも」
「眠れる森の美女かよ…。王子様がお迎えにあがるまで寝てたら良かったんじゃないの?」
「嫌だな、それ」
笑いながら席に着く。
前には高砂くんの背中が見えた。
さすがにお礼を言わなきゃ…礼儀のない奴だと思われちゃうよな。
ツンツン
「…ん、なに?」
「さっきはありがとう」
「別に大した事やってないし」
「そっか…でも」
「子供みたいな顔して寝てた…のは見たかも」
「はっ?」
「いや、なんでも無い」
なんでも無いわけないだろう。
僕の寝顔じっと見てたのか?
「あっ!まさかキスしてないよね?」
「はぁ!?なんでそうなる。するわけ無いだろ」
「あははは、そうだよね。ごめん、そんな訳ないか〜」
しまった!思わず言葉にしちゃったよぉ。
ダメだなあ、僕って。
そうだ、木戸さんにもお礼を言っておくか。
声かけてくれたの彼女だし。
「木戸さん、さっきは気づいてくれてありがとう」
「宮代くん、顔色よくなってる。よかったね〜」
「うん、お陰さまで」
木戸さんが目で合図してこっち、こっちと僕を呼んでいる。
「なっ、なに?」
「実はさぁ小テストの前、高砂くんが宮代くんの事をずっと見てたんだよね。
なにを見てるんだろうって思って横を見たら宮代くんが真っ青な顔してて。
だから私が声をかけたの。
多分、一番最初に気付いたのは高砂くんだよ」
「そうなんだ」
「でもさあ、宮代くんを保健室に連れていく高砂くん、めっちゃカッコよかったんだよね。
手首つかんで、保健室に連れていく姿とかもう最高だったぁ〜。
今思い出してもニヤケが止まらない…。
へへへ」
「あっ、そうですか…。」
やっぱり人気あるんだな。
あんなの見たら好きになる子だっているかもしれない。
いいなって思う子もきっといる
この木戸さんみたいに…。
…ってちがーーーう!
何を考えてるんだ。
運命の人が現れる様にお守りを渡したのは僕なのに。
** 帰り **
お守りを買ったお店の前
扉を開けようかやめようか…
すでに2、3往復している。
せっかくここまで来たんだ!やっぱ開けよう
カランカラン
「いらっしゃいませ」
「あのぉ、僕、この前羅針盤のチャームを買ったんですけど」
「はい、はい、覚えてますよ」
「それで……一つ聞きたいことがあって。
あのお守りって運命の人に出会えるお守りですよね。プレゼントしたらずっと欲しかったって言われて…。
しかも、これを貰ったのは運命みたいだって言われたんですけど。どういう意味で受け取ったらいいのかなって」
「そのままの意味で受け取ったらいいんじゃないですか?」
「はっ?」
「難しく考えずに…。プレゼントされた人は、あなたからもらう運命だったって事ですよ」
「じゃあ、運命の人っていう意味じゃないんですね?」
「そうですね、でも人それぞれですからね〜」
「そうなんですか…人それぞれか」
はぁ〜、困ったな
どうしよう。
あっ、ガラス玉!
ガラス玉はどうなってる?
慌ててポケットから取り出して覗いてみた。
……昨日より曇ってる
なんでだよーっ!
丁度お店にいる訳だし、これについてもなにかアドバイスをもらえないかなぁ。
あと、残り4日
96時間
えっ、100時間を切ってしまった…。
さすがにこれはマズイだろ。



