6月1日、晴れた日の朝、NFC当日。
フローティングアイランドには、専用の埠頭が存在する。
住宅エリアから、およそ徒歩15分ほどの場所に位置しているが、基本的に立ち入り禁止区域に指定されていた。
NFCなどでチャーターしたフェリーが停泊するためだけに使用され、これだけでも近ネクの特殊性が垣間見える。
フェリーの出航予定時刻は7:00。
雪音たち1年生は、その時刻に合わせ6:30集合が義務付けられていた。
各クラス担任によって点呼が行われ、当日の欠席者は0人ということが確定。
点呼終了後からは、担任から各クラスに軽く注意事項が説明され、5クラス、4クラスと順番にフェリーへと乗り込んでいった。
全員が乗船し終わると、タラップが外され出港準備が開始される。
船内外で、乗務員が忙しそうに動き回っていた。
ブォーと、お腹の底まで響くような汽笛が鳴り、目的地に向けて静かに動き出す。
船が動き出すと同時に、船内にアナウンスが流れ始めた。
「近未来ネクスト人材開発高等学校1年次の皆様、おはようございます。当船は、これより、第一近ネクアイランドへ向けて航行して参ります。到着予定時刻は11:00となっており、4時間ほどの船旅となります。船内では特に課題等は設けられておりませんので、到着までごゆっくりとお寛ぎくださいませ」
アナウンスを聞き終わると、デッキに移動する者、客室に寝転がる者、仲良し同士でおしゃべりする者など、各々が束の間の休息を楽しむような行動を取った。
雪音も真央やめぐみ、クラスで仲が良いもの同士で集まり、たわいもない話に花を咲かせる。
第一近ネクアイランド到着予定時刻10分前には、忘れ物がないようになど注意点のアナウンスが入った。
アナウンスから少しして、ゴツンと船に衝撃が走り、接岸したことを告げる。
下されたタラップから、生徒はクラス単位で下船を始めた。
第一近ネクアイランドの埠頭から目と鼻の先ほどの距離に管理棟が見える。
管理棟前のグランドには、白い集会用のテントが複数設置され、長テーブル、PC、支給用物品などが並べられていた。
テントの前にクラスごとに整列し、1人ずつ受付をするとスマホに番号の通知が届く。
番号は1~30まであり、それがグループ番号になっている。
各クラスから同じ番号を割り振られた5人が集まる仕組みだ。
その振り分けられた番号を元に、それまで一緒だったクラスの仲間から離れ、各グループへとわかれていった。
真央は3番、めぐみは7番。そして雪音は28番という番号をスマホで確認する。
小声で「がんばろうね」と言い合い、小さく手を振り2人の背中を見送った。
辺りをきょろきょろ見渡していると、ピピッとスマホの通知音。
画面をタップし内容を確認すると、メッセージの内容はグループ集合場所に関するもので、雪音は地図アプリを頼りにその場所へと向かった。
集合場所に到着すると、すでに他クラスのメンバー4人が揃っている。
「2クラスの下久保さんね。わたくしは、5クラスの宮園一花。よろしくお願いしますわ」
「あっ、初めまして…下久保です、よろしくお願いします」
「ははっ、初めましてってことはないと思うけど、俺4クラスの前田仁、よろしくな」
「自己紹介の流れだな。俺は3クラスの神野智樹、よろしく頼むな」
「次はわたしだね。えっと1クラスの秋だよ。久我山秋ね、よろー」
全員の挨拶が済んだところで、一花が4人を見渡しながら話を進めようとする。
「5人揃ったことだし、まずはリーダーでも決めましょうか」
「そうだな、でも、俺は宮園でいいと思うけどな」
智樹は一花の方を顎で小さくしゃくりながら、そう言った。
「ありがとう神野くん。でも、リーダーをやりたい人もいるかもしれないから、安易に決めるわけにはいかないわよ」
「あー、秋も一花っちでいいと思うよ」
「そうだな、俺も宮園でいいと思うぞ。なんの異論もないからな」
秋と仁も納得の表情で一花を見ていた。
「あとは、下久保さんはいかがかしら」
「あっ、えっと、宮園さんでお願いします」
「うふふ、下久保さんにもお願いされちゃったから、リーダーを引き受けさせていただきますわ」
一花はスマホを操作している。
「リーダー登録を完了させましたわ。それでは、皆さんで作戦会議といきましょうか」
4人は一花の言葉に静かに頷いたタイミングで、スマホの通知音が鳴った。
一斉にスマホを確認するグループメンバー。
「なかなか、移動に骨が折れそうだな」
仁が難しい顔をしている。
「まぁ、俺らはなんとかなるとして、宮園は…大丈夫か。久我山と下久保はどうだ?」
「あら、神野くん失礼ね。わたくし、こう見えてもか弱い乙女ですわよ。うふふ」
「よく言うぜ。俺らより体力あるんじゃねーか」
智樹と仁が顔を見合わせて笑っている。
「あー、秋はねー、余裕だよ」
笑顔で親指を立てる秋。
「あっ、わ、わたしは自信ないです…」
「それでは、下久保さんのペースに合わせることを前提に考えましょうか」
智樹、仁、秋の3人は一花の言葉に頷く。
「あ、足引っ張ったら、ご、ごめんなさい…」
雪音は今にも泣きだしそうな雰囲気。
「大丈夫ですわ、下久保さん。このNFCのルールと配点をよく見てごらんなさい」
一花がスマホの画面を全員に見せながら説明する。
「わたくしたちのテーブルは6チームでの争い。全員到着必須の指定エリア着順ポイントは、1位が10点、2位が8点、3位が6点、4位が4点、5位が2点、そして6位が1点。4位や5位でも、確実に点数は入りますわ。さらに、ランダムミッションは、個人でのクリアでも、そのポイントがグループに加算されますの」
「うんうん、そうだな。 宮園の言う通り、俺らが途中のランダムミッションを片っ端から回収していけば、十分に上位を狙えるってことだ」
仁がポンと手を叩き、安心させるように雪音に笑いかけた。
「まぁ、そういうことですので、下久保さんは下久保さんにできることをお願いしますわね」
「は、はい。がんばります」
両の拳を握りしめ小さく力を込める雪音、それを見た秋が優しく背中をポンと叩いてウインク。
「雪音っち、大丈夫だって。一花っち、仁、智樹に任せておけばね」
「久我山も頑張れよな」
智樹が笑いながら秋に向けて、銃を撃つようなポーズを取る。
「へい、へーい。秋は秋なりに頑張るよ」
「今の時間は12:20か。14:00に1回目の更新があるとして、法則性がわかんないから動かない選択をするのか。それとも、真ん中の3-3に移動して様子を見るのかってとこだな」
智樹が顎に手を当てながら、右斜め上を見ながら話す。
「まぁ、確かに常套手段ではあるよな。ただ、他のグループも同じことを考えているだろうし。ここで、移動して下久保の体力を減らすのも得策とは言えないかもな」
仁は腕を組み眉間にしわを寄せている。
「そうですわね。神野くん、前田くんの意見はごもっともですわ。現在の場所はスタート地点の隣5-2ですから、ここから他グループの動きを見ながら、初日はポイント狙いよりも観察重視でいきましょうか」
リーダーである一花の意見に4人共頷く。
「話し合い終わりだよねー。更新される前にさ、なんか食べようよ。秋お腹空いたー」
お腹に両手を当てて空腹アピールをする秋。
それを見て、雪音以外の3人はクスクスと笑っている。
雪音は不安な表情で、リュックのベルト部分をもじもじといじっていた。
「食べ過ぎると移動に支障をきたすから、ほどほどに腹ごしらえといこうか」
仁の言葉に全員頷き、支給されたリュックの中から食料を取り出す。
食事の最中は、秋が雪音の隣で「心配すんな」と声をかけていた。
スマホの時刻は13:20を表示。
ストレッチで入念に身体を動かす仁、一花、智樹の3人。
秋は雪音の側で、たわいもない話をずっとしている。
雪音も秋の優しさで、心がほぐれたようで笑顔を見せるようになっていた。
時刻が14:00になると、スマホに通知が送られてくる。
指定エリアは4-5、比較的場所も近いことから着順ポイントを狙うために移動を開始。
島の外周に沿ったルートは、膝丈くらいの草地でアップダウンはあるものの歩きやすかった。
体力に自信のある仁と智樹が雪音を挟み、先頭の一花に続き、殿は秋が務める。
少ししんどそうな雪音を励ましながら、グループで進むこと一時間強。
最初の指定エリアに到着、着順ポイントは2位の8ポイントだった。
着順2位に安堵していると、ミッション通知が送られてきた。
内容は2-5エリアの乙女岩を背景に撮影し、1500いいねを獲得すること、先着6グループまで参加可能。
ここはポイント獲得のために、ネクスタが得意な秋が単独で向かった。
時刻は16:00になり指定エリアが更新されると同時に全速力で走る秋が戻ってくる。
結果を聞くと5分ほどで1500いいねを獲得し、グループに10ポイントが入った。
次の指定エリアは1-3で、島の外周ではあるが岩肌が目立つ場所ということもあり、着順報酬は狙わず5-2まで戻ることを決める。
17:20、5-2エリアまで戻ってきた。
初日はグループポイント18を稼ぎ、30グループ中6番目と好位置につけている。
6月2日、小雨が降る朝、NFC2日目。
朝からあいにくの天気模様。
雪音の所属するグループの作戦は、初日同様に無理はしないという方針に変更はなかった。
10:00になり2日目最初の指定エリアは2-1。
外周ではあるが、草地と岩肌が混在していることから、着順報酬は狙わずゆっくりと移動する。
2回目の更新20分前に到着し、着順は5位2ポイントを獲得した。
12:00の更新は3-4、島の中央にある山を越えなければならず、ここにきて試練が訪れる。
移動中にランダムミッションが4-3で発生し、内容は数学だった。
ここで、勉強が得意な雪音とサポートに仁、一花、智樹、秋は山越えルートを選択しグループをわけ、3-4で合流して着順報酬も狙う作戦にでる。
ランダムミッションにはなんとか間に合い雪音は満点で10ポイントを獲得、仁のサポートでぬかるんだ険しい道のりを経て13:48に3-4へ到着した。
着順ポイントは6位となり1ポイントに留まり、ここまでの合計は31ポイント。
休む暇もなく16:00の指定エリアが通知される。
「ここまで31ポイントで7位ですわね。上位も狙える好位置といったところでしょうか。これもひとえに皆さんのご活躍のお陰ですわね」
一花の労うような言葉に、より一層気を引き締める4人。
「次は3-1か…山越えるか、遠回りするかだな。下久保は体力どうだ?」
仁が雪音に心配そうに声をかける。
雪音はグッと顔に力を込めて「大丈夫」と一言だけ発した。
「皆さん、お疲れでしょうが、ここで一勝負しかけましょう。山越え最短ルートを攻めますわよ」
一花の言葉に無言で拳を突き上げる仁、智樹、秋、雪音。
そのまま残りの体力を気にせず、過酷な山越えルートを進む。
ぬかるんだ足元、道なのかもわからない道、何度も雪音は転びながらもついて行く、その度に仁や智樹がサポートしてくれていた。
結束の強さをみせた雪音所属のグループは、泥だらけになりながらも14:58に3-1に到着し10ポイントを手繰り寄せる。
喜んだのも束の間、2日目最終指定エリアは1-5、3-1からは遠く時間もかかるため無理をせず、ベースキャンプにしている5-2まで戻ることに決める。
2日目終了時点での合計ポイントは41ポイント、30グループ中8番目と善戦むなしく初日より順位を落とした。
「皆さん、本日はお足元の悪い中、本当にお疲れ様でしたわ」
一花は4人に頭を下げた。
「宮園もほんとお疲れ様」
智樹が一花の肩を軽く叩いて労をねぎらう。
「ほんと宮園の判断は、それ以上もそれ以下もないくらいだったな。さすが5クラスのエリート」
仁は一花に親指を立てている。
「一花っちもだけど、仁も智樹もだし、雪音っちも、もちろんわたしもだけど、みんな頑張ったよ」
秋は疲れながらも満面の笑みを浮かべていた。
「前田くん、神野くんにはたくさんサポートしてもらって、ありがとうございます。宮園さんも久我山さんも頑張ってたので、わたしも見習いたいです」
「下久保は足首とか大丈夫か?けっこう山越えの時に、派手に転んでたからな」
仁と智樹が心配な顔で泥だらけの雪音に視線を送る。
「う、うん、大丈夫。どこも怪我してないと思う」
雪音の言葉に4人共ほっと胸をなでおろしていた。
グループの絆が深まったところで、スマホに通知がくる。
内容はミッションではなく、天候が悪かったため、特別に管理棟の浴場を開放するとの内容だった。
泥だらけで掴んだポイント以上に得るものが多かった2日目、汚れを洗い流し最終日の戦いへと向かう。
フローティングアイランドには、専用の埠頭が存在する。
住宅エリアから、およそ徒歩15分ほどの場所に位置しているが、基本的に立ち入り禁止区域に指定されていた。
NFCなどでチャーターしたフェリーが停泊するためだけに使用され、これだけでも近ネクの特殊性が垣間見える。
フェリーの出航予定時刻は7:00。
雪音たち1年生は、その時刻に合わせ6:30集合が義務付けられていた。
各クラス担任によって点呼が行われ、当日の欠席者は0人ということが確定。
点呼終了後からは、担任から各クラスに軽く注意事項が説明され、5クラス、4クラスと順番にフェリーへと乗り込んでいった。
全員が乗船し終わると、タラップが外され出港準備が開始される。
船内外で、乗務員が忙しそうに動き回っていた。
ブォーと、お腹の底まで響くような汽笛が鳴り、目的地に向けて静かに動き出す。
船が動き出すと同時に、船内にアナウンスが流れ始めた。
「近未来ネクスト人材開発高等学校1年次の皆様、おはようございます。当船は、これより、第一近ネクアイランドへ向けて航行して参ります。到着予定時刻は11:00となっており、4時間ほどの船旅となります。船内では特に課題等は設けられておりませんので、到着までごゆっくりとお寛ぎくださいませ」
アナウンスを聞き終わると、デッキに移動する者、客室に寝転がる者、仲良し同士でおしゃべりする者など、各々が束の間の休息を楽しむような行動を取った。
雪音も真央やめぐみ、クラスで仲が良いもの同士で集まり、たわいもない話に花を咲かせる。
第一近ネクアイランド到着予定時刻10分前には、忘れ物がないようになど注意点のアナウンスが入った。
アナウンスから少しして、ゴツンと船に衝撃が走り、接岸したことを告げる。
下されたタラップから、生徒はクラス単位で下船を始めた。
第一近ネクアイランドの埠頭から目と鼻の先ほどの距離に管理棟が見える。
管理棟前のグランドには、白い集会用のテントが複数設置され、長テーブル、PC、支給用物品などが並べられていた。
テントの前にクラスごとに整列し、1人ずつ受付をするとスマホに番号の通知が届く。
番号は1~30まであり、それがグループ番号になっている。
各クラスから同じ番号を割り振られた5人が集まる仕組みだ。
その振り分けられた番号を元に、それまで一緒だったクラスの仲間から離れ、各グループへとわかれていった。
真央は3番、めぐみは7番。そして雪音は28番という番号をスマホで確認する。
小声で「がんばろうね」と言い合い、小さく手を振り2人の背中を見送った。
辺りをきょろきょろ見渡していると、ピピッとスマホの通知音。
画面をタップし内容を確認すると、メッセージの内容はグループ集合場所に関するもので、雪音は地図アプリを頼りにその場所へと向かった。
集合場所に到着すると、すでに他クラスのメンバー4人が揃っている。
「2クラスの下久保さんね。わたくしは、5クラスの宮園一花。よろしくお願いしますわ」
「あっ、初めまして…下久保です、よろしくお願いします」
「ははっ、初めましてってことはないと思うけど、俺4クラスの前田仁、よろしくな」
「自己紹介の流れだな。俺は3クラスの神野智樹、よろしく頼むな」
「次はわたしだね。えっと1クラスの秋だよ。久我山秋ね、よろー」
全員の挨拶が済んだところで、一花が4人を見渡しながら話を進めようとする。
「5人揃ったことだし、まずはリーダーでも決めましょうか」
「そうだな、でも、俺は宮園でいいと思うけどな」
智樹は一花の方を顎で小さくしゃくりながら、そう言った。
「ありがとう神野くん。でも、リーダーをやりたい人もいるかもしれないから、安易に決めるわけにはいかないわよ」
「あー、秋も一花っちでいいと思うよ」
「そうだな、俺も宮園でいいと思うぞ。なんの異論もないからな」
秋と仁も納得の表情で一花を見ていた。
「あとは、下久保さんはいかがかしら」
「あっ、えっと、宮園さんでお願いします」
「うふふ、下久保さんにもお願いされちゃったから、リーダーを引き受けさせていただきますわ」
一花はスマホを操作している。
「リーダー登録を完了させましたわ。それでは、皆さんで作戦会議といきましょうか」
4人は一花の言葉に静かに頷いたタイミングで、スマホの通知音が鳴った。
一斉にスマホを確認するグループメンバー。
「なかなか、移動に骨が折れそうだな」
仁が難しい顔をしている。
「まぁ、俺らはなんとかなるとして、宮園は…大丈夫か。久我山と下久保はどうだ?」
「あら、神野くん失礼ね。わたくし、こう見えてもか弱い乙女ですわよ。うふふ」
「よく言うぜ。俺らより体力あるんじゃねーか」
智樹と仁が顔を見合わせて笑っている。
「あー、秋はねー、余裕だよ」
笑顔で親指を立てる秋。
「あっ、わ、わたしは自信ないです…」
「それでは、下久保さんのペースに合わせることを前提に考えましょうか」
智樹、仁、秋の3人は一花の言葉に頷く。
「あ、足引っ張ったら、ご、ごめんなさい…」
雪音は今にも泣きだしそうな雰囲気。
「大丈夫ですわ、下久保さん。このNFCのルールと配点をよく見てごらんなさい」
一花がスマホの画面を全員に見せながら説明する。
「わたくしたちのテーブルは6チームでの争い。全員到着必須の指定エリア着順ポイントは、1位が10点、2位が8点、3位が6点、4位が4点、5位が2点、そして6位が1点。4位や5位でも、確実に点数は入りますわ。さらに、ランダムミッションは、個人でのクリアでも、そのポイントがグループに加算されますの」
「うんうん、そうだな。 宮園の言う通り、俺らが途中のランダムミッションを片っ端から回収していけば、十分に上位を狙えるってことだ」
仁がポンと手を叩き、安心させるように雪音に笑いかけた。
「まぁ、そういうことですので、下久保さんは下久保さんにできることをお願いしますわね」
「は、はい。がんばります」
両の拳を握りしめ小さく力を込める雪音、それを見た秋が優しく背中をポンと叩いてウインク。
「雪音っち、大丈夫だって。一花っち、仁、智樹に任せておけばね」
「久我山も頑張れよな」
智樹が笑いながら秋に向けて、銃を撃つようなポーズを取る。
「へい、へーい。秋は秋なりに頑張るよ」
「今の時間は12:20か。14:00に1回目の更新があるとして、法則性がわかんないから動かない選択をするのか。それとも、真ん中の3-3に移動して様子を見るのかってとこだな」
智樹が顎に手を当てながら、右斜め上を見ながら話す。
「まぁ、確かに常套手段ではあるよな。ただ、他のグループも同じことを考えているだろうし。ここで、移動して下久保の体力を減らすのも得策とは言えないかもな」
仁は腕を組み眉間にしわを寄せている。
「そうですわね。神野くん、前田くんの意見はごもっともですわ。現在の場所はスタート地点の隣5-2ですから、ここから他グループの動きを見ながら、初日はポイント狙いよりも観察重視でいきましょうか」
リーダーである一花の意見に4人共頷く。
「話し合い終わりだよねー。更新される前にさ、なんか食べようよ。秋お腹空いたー」
お腹に両手を当てて空腹アピールをする秋。
それを見て、雪音以外の3人はクスクスと笑っている。
雪音は不安な表情で、リュックのベルト部分をもじもじといじっていた。
「食べ過ぎると移動に支障をきたすから、ほどほどに腹ごしらえといこうか」
仁の言葉に全員頷き、支給されたリュックの中から食料を取り出す。
食事の最中は、秋が雪音の隣で「心配すんな」と声をかけていた。
スマホの時刻は13:20を表示。
ストレッチで入念に身体を動かす仁、一花、智樹の3人。
秋は雪音の側で、たわいもない話をずっとしている。
雪音も秋の優しさで、心がほぐれたようで笑顔を見せるようになっていた。
時刻が14:00になると、スマホに通知が送られてくる。
指定エリアは4-5、比較的場所も近いことから着順ポイントを狙うために移動を開始。
島の外周に沿ったルートは、膝丈くらいの草地でアップダウンはあるものの歩きやすかった。
体力に自信のある仁と智樹が雪音を挟み、先頭の一花に続き、殿は秋が務める。
少ししんどそうな雪音を励ましながら、グループで進むこと一時間強。
最初の指定エリアに到着、着順ポイントは2位の8ポイントだった。
着順2位に安堵していると、ミッション通知が送られてきた。
内容は2-5エリアの乙女岩を背景に撮影し、1500いいねを獲得すること、先着6グループまで参加可能。
ここはポイント獲得のために、ネクスタが得意な秋が単独で向かった。
時刻は16:00になり指定エリアが更新されると同時に全速力で走る秋が戻ってくる。
結果を聞くと5分ほどで1500いいねを獲得し、グループに10ポイントが入った。
次の指定エリアは1-3で、島の外周ではあるが岩肌が目立つ場所ということもあり、着順報酬は狙わず5-2まで戻ることを決める。
17:20、5-2エリアまで戻ってきた。
初日はグループポイント18を稼ぎ、30グループ中6番目と好位置につけている。
6月2日、小雨が降る朝、NFC2日目。
朝からあいにくの天気模様。
雪音の所属するグループの作戦は、初日同様に無理はしないという方針に変更はなかった。
10:00になり2日目最初の指定エリアは2-1。
外周ではあるが、草地と岩肌が混在していることから、着順報酬は狙わずゆっくりと移動する。
2回目の更新20分前に到着し、着順は5位2ポイントを獲得した。
12:00の更新は3-4、島の中央にある山を越えなければならず、ここにきて試練が訪れる。
移動中にランダムミッションが4-3で発生し、内容は数学だった。
ここで、勉強が得意な雪音とサポートに仁、一花、智樹、秋は山越えルートを選択しグループをわけ、3-4で合流して着順報酬も狙う作戦にでる。
ランダムミッションにはなんとか間に合い雪音は満点で10ポイントを獲得、仁のサポートでぬかるんだ険しい道のりを経て13:48に3-4へ到着した。
着順ポイントは6位となり1ポイントに留まり、ここまでの合計は31ポイント。
休む暇もなく16:00の指定エリアが通知される。
「ここまで31ポイントで7位ですわね。上位も狙える好位置といったところでしょうか。これもひとえに皆さんのご活躍のお陰ですわね」
一花の労うような言葉に、より一層気を引き締める4人。
「次は3-1か…山越えるか、遠回りするかだな。下久保は体力どうだ?」
仁が雪音に心配そうに声をかける。
雪音はグッと顔に力を込めて「大丈夫」と一言だけ発した。
「皆さん、お疲れでしょうが、ここで一勝負しかけましょう。山越え最短ルートを攻めますわよ」
一花の言葉に無言で拳を突き上げる仁、智樹、秋、雪音。
そのまま残りの体力を気にせず、過酷な山越えルートを進む。
ぬかるんだ足元、道なのかもわからない道、何度も雪音は転びながらもついて行く、その度に仁や智樹がサポートしてくれていた。
結束の強さをみせた雪音所属のグループは、泥だらけになりながらも14:58に3-1に到着し10ポイントを手繰り寄せる。
喜んだのも束の間、2日目最終指定エリアは1-5、3-1からは遠く時間もかかるため無理をせず、ベースキャンプにしている5-2まで戻ることに決める。
2日目終了時点での合計ポイントは41ポイント、30グループ中8番目と善戦むなしく初日より順位を落とした。
「皆さん、本日はお足元の悪い中、本当にお疲れ様でしたわ」
一花は4人に頭を下げた。
「宮園もほんとお疲れ様」
智樹が一花の肩を軽く叩いて労をねぎらう。
「ほんと宮園の判断は、それ以上もそれ以下もないくらいだったな。さすが5クラスのエリート」
仁は一花に親指を立てている。
「一花っちもだけど、仁も智樹もだし、雪音っちも、もちろんわたしもだけど、みんな頑張ったよ」
秋は疲れながらも満面の笑みを浮かべていた。
「前田くん、神野くんにはたくさんサポートしてもらって、ありがとうございます。宮園さんも久我山さんも頑張ってたので、わたしも見習いたいです」
「下久保は足首とか大丈夫か?けっこう山越えの時に、派手に転んでたからな」
仁と智樹が心配な顔で泥だらけの雪音に視線を送る。
「う、うん、大丈夫。どこも怪我してないと思う」
雪音の言葉に4人共ほっと胸をなでおろしていた。
グループの絆が深まったところで、スマホに通知がくる。
内容はミッションではなく、天候が悪かったため、特別に管理棟の浴場を開放するとの内容だった。
泥だらけで掴んだポイント以上に得るものが多かった2日目、汚れを洗い流し最終日の戦いへと向かう。

