冷たい月と星天のクロノグラフ

「すっごい偶然! 天津さんはなんでここにいんの?」


梶葉くんこそ、どうしてここにいるの……
住んでる場所はこことは遠いところだよね?
梶葉くんの人生と重ならないように気をつけて生きてきたつもりだったのに。


「梶葉くんこそどうして?」

「俺? 友達を空港まで送って来たんだ。そいつ大学時代からの親友なんだけど、日本のアニメが好きでよく遊びに来てるんだ。今回は――ごめん、ひとりで話して」

口を開いたら泣きそうで、目にぎゅっと力を入れて頭だけふった。

早く「じゃあね」って別れないといけないのに、この場を立ち去ることが出来ない。
顔を見てたら欲張りになって、もっと話していたくなる。

「……これってさ、ここで会えたのって、すごいことだと思わない?」

さっきまでのテンションと違って、いきなり真面目な口調で言われた。


――この出会いを無駄にはしないって――


ぐしゃぐしゃと頭を掻きながら照れたような顔をする梶葉くんを見て、ありもしないことを想像する。

「あーっと……久しぶりに会っていきなり聞くのもアレなんだけど、今は……付き合ってるやついる?」

すぐに答えられなかった。

「ごめん、一回フラれてるのはわかってるんだ。あれからスッパリ諦めたつもりでいたのに……天津さんも……会えて……少しは嬉しかったりする……?」


――とにかく必死だった――


「もし、誰か特定の相手がいないなら、すっげぇバカなこと言うけど――」


――もう離したくないと思ったから――


「天津さん、もう一回、俺にチャンスをくれない――って、え? な、なんで泣いてんの?」



だって……

だってね……気づいてしまった。

どうして25歳の梶葉くんが、「彼女」のことを聞いても、はぐらかした答えしか教えてくれなかったのか。

あの頃の梶葉くんの言葉の意味がわかったから。



「天津さん?」

「わたしは……」


梶葉くんともう一度会えて嬉しい。


「涙を拭くからシャツ貸して!」

「へ? うん。いいよ、いくらでも貸すよ」




わたしは同じひとに二度恋をした。

一度目は17歳の梶葉くん。

二度目は25歳の梶葉くん。


そして、これから三度目の恋をする。





END