冷たい月と星天のクロノグラフ

わたしが未成年だったことで名前は伏せられていたけれど、義理の娘に暴行を加えようとして刺されたことや、あいつのスマホからたくさんの女子高生の写真や、行為中の動画が見つかったことがネットニュースになり、様々な憶測がコメント欄を賑わせた。

「刺した子って、義父に毎日のようにヤられてたらしいよ」

「自分から言い寄ってたらしいよ」

「義娘って援交してたんだって」

「お金を払えば何でもしてくれる子って聞いた」

「自業自得」

SNSでも、会ったこともない人が好き勝手なことを呟いているのを目にした。

親戚中もわたしを腫れ物扱いで、わたしを押し付けあった。
周囲には助けてくれるひともいなくて、17歳のわたしに出来ることは何もない。

結局わたしは住み慣れた場所とは遠い擁護施設へ入り、児童福祉の担当の人と相談の上、高校も転校した。

誰も知らない場所での生活は、単に「訳あり」の高校生というレッテルだけで遠巻きに扱われるだけで済んだけれど、通っていた高校では、義父が逮捕されたことはきっと知られてしまったから、何か言われてるんじゃないかと思うと、誰とも連絡を取ることが出来なかった。

どこで調べたのか、「匿名にするからインタビューに答えてよ」と、記者に追いかけられることもあった。

最悪だったのは、あいつはお母さんと再婚した時にわたしを養子縁組していたから、わたしはあいつの名字で生きていかなければならないということ。
あいつが養子縁組の解消に同意しない限り、わたしは「月埜」の名字のまま、その名前で呼ばれるたびにあいつの顔が浮かぶ。


襲われた時のことや、理由はどうあれ自分が人を傷つけてしまった事実がフラッシュバックとなってわたしを追い詰めた。

息が苦しくなって、訳もなく涙が止まらなくなることが何度もあった。

男の人が怖くて触られるのも気持ち悪い。

だから電車やバスにも乗れない。

夜中に自分の叫び声で目が覚めた。



毎日、空を見上げた。


この空は梶葉くんのいる場所と繋がっている。
きっと同じ空を見ている。


わたしが過ごした未来にはちゃんと意味があった。

記憶がなかったから、わたしはたくさんの想い出を心に刻みつけることが出来た。

あの未来で過ごした記憶を思い出すと心が温かくなる。


少しづつでも恐怖を克服してみせる。絶対に負けない。


わたしは、生きることを決してあきらめたりしない。