冷たい月と星天のクロノグラフ

長い、長い、長い夢を見ていた気がする。


目が覚めるとそこは病院で、わたしは1週間ほど行方不明だったと教えられた。


あの夜、窓を開けていたから、大きな音と言い争う声を聞いたマンションの住民が警察に通報してくれていた。

あいつは、非常ベルの音で廊下に出て来た住民に怪我のことを聞かれ、上手く誤魔化せなかったことから警察に事情聴取されることになって、事件が発覚し逮捕された。

警察が必死に捜査したにも関わらず、わたしは見つからず、一時は義父がわたしを殺してどこかへ隠したんじゃないかという疑いを持たれたらしい。
でも目撃者の証言からそんな時間はなかったということがわかり、わたしの捜索は続けられたが、見つからなかった。

それが突然、住んでいたマンションの非常階段で倒れているのが見つかり、病院へ運ばれた。
警察の人から事情を聞かれたけれど、あの未来での出来事を答えられるわけがなく、記憶を失ったフリを通すしかなかった。

わたしがあいつを刺したのは偶然にも太ももの大動脈で、その時に大腿神経も同時に傷ついた。そのせいで、あいつは一生足を引きずって歩くという後遺症を負うことになった。
誰もが「当然の報い」という言葉を使い、あいつに同情を寄せる声はなかったけれど、正当防衛だとは言え、わたしが傷つけた事実は消えない。
あの時は逃げるのに精一杯だったけれど、もっと他にいい方法があったんじゃないかと自分を責め続た。

でも本当の苦しみはそんなことじゃなかった。


退院後のわたしを待っていたのは、目に見えない地獄だった。