冷たい月と星天のクロノグラフ

「そんなに……似てるんですか? わたしとその……月埜さんというひと」

「似てる似てる。本人かと思うくらい。写真見せようか?」

男性はしばらくスマホを操作してからわたしに画面を向けた。

「女の子が天津さんで、その隣にいるのが俺」

それは学校の教室で前後の席に座ったジャージ姿の男女が自撮りで撮った写真だった。
写真の男の子の方は黒くて短い髪にメガネをかけているのに対して、目の前にいる男性は少し長めの茶髪でメガネもしていないから何度か見比べた。

「この男の子が……あなた?」

「そ。昔の俺。8年前はそんな感じだった」


こんなの嘘だ。


「その頃はいかにもマジメくんじゃない? 今もマジメだけど」

「ははは」と男性は無邪気に笑った。



わたしを睨みつけている女の子の姿が頭の中に浮かんだ。

同じ濃紺のセーラー服を着ていて、胸にはグリーンのスカーフをしている。真っ直ぐな髪のわたしと違って、ふわふわとした髪をしていその子はわたしを睨みつけて言った。

「サイッテー」

それは、わたし……のことだよね?



「大学に入ってからコンタクトに変えたんだ」

その声で現実に引き戻された。


あの女の子は誰?

わたしがあの子に何かしたの?


でも、今は目の前の気になることを先に解決したい。

「兄貴がずっとバレー部で短髪だったから、親父に俺まで同じ扱いをされて――」

「さっきから、どうしてこの写真の子を月埜って言ったり、天津って言ったりするんですか?」

「彼女、高2の冬に名字が天津から月埜に変わったんだ。でもいろいろあって、俺だけ天津って呼んでたからつい癖で。本当は月埜だから、君が親戚なら月埜の名前を言った方がわかるかと思って」


また……電波が悪い時みたいに断片的な映像が浮かんだ。