冷たい月と星天のクロノグラフ

梶葉くんはわたしが泣いた理由を知らない。
玉ねぎのせいじゃないくらい梶葉くんも気づいたと思うけど、何も聞かれなかった。
いつだって、言いたくないことは無理に聞こうとしない。

思い出した記憶はいいことばかりじゃなかったけど、梶葉くんとのことを思い出せて良かった。

未来へやって来て、出会えたのが梶葉くんで良かった。



「いただきます」

「いただきます」

時間をかけて野菜を煮込んだカレーは市販のルーを2種類合わせて作ったもので、辛口に蜂蜜で甘さを調節している。

「ん――」

「あ――」

ひと口食べて、お互いに顔を見合わせた。

「トマト入れ忘れた」

「やっぱり何か足らないと思ったけど、トマトだよね……」

「これはこれでうまいんだけど……トマトいるな」

たわいもない会話。

「いるねー」

「一度だけ、香辛料を買って来て、ふたりでレシピ見ながら小麦粉からルーを作ったんだ。そしたら見事にマズいもんが出来て、やっぱカレーのルーは市販のものに限ると結論づいた」

「辛口のルーに蜂蜜も必須アイテムだよね。甘辛が美味しい」

緩やかな時間。

「だな」


楽しいことには終わりが来る。