「あれ、ヘビイチゴなんだ。少し前まで黄色い花だったのがようやく実になったところで、あれを取りたかっただけ。死ぬつもりなんて全然ないよ」
「取ってどうするの?」
「食べる」
「食べる? だって毒とかあるかもしれないのに! 名前からして危ない感じがする」
「毒はないよ。名前にヘビがついてるのにはいくつか説があるけど――」
梶葉くんはそこでヘビイチゴの名前の由来について長々と語ってくれた。
「こんなとこで見かけるのはめずらしいから、多分、鳥の糞の中にあった種が育ったんだと思う。イチゴみたいに美味しそうだけど味は全くないらしいんだ。それを自分で確かめたくて」
「へっ?」
「手を伸ばしても届かないから」
フェンスの隙間は狭すぎて腕を入れようにも手首までしか入らない。
「死のうとしたんじゃなかったんだ……」
「そんなことしないよ。さっきの、俺もその通りだと思う。自分から命を断つなんて選択は絶対したらだめなやつ」
「あ――」
その時、どこからか飛んできた鳥が、たった一つしかないヘビイチゴの実を突いて食べてしまった。
「あーーーーーっ! ずっと実がなるまで見守ってきたのに! マジかぁ……」
あまりにも梶葉くんがガッカリするから、失礼だとは思いながら笑った。
そんなわたしを見て梶葉くんも笑った。
「俺は1ーAの梶葉恒。そっちは?」
「1ーDの天津胡桃――って、ゴミ捨ての途中だった! じゃあね、梶葉くん!」
校舎の入り口にゴミ箱を置きっぱなしにしてきたことを思い出して、急いで走ってその場を去った。
「あの日から、俺はずっと天津さんが好きだった」
「そんな理由で?」
「命はひとつしかない。それって当たり前だけど大切なことだろ? 俺と同じように考えてる子がいることを知って嬉しかったんだ」
そんなふうに思ってもらえてたなんて知らなかった。
17歳だった時の梶葉くんにちゃんと好きだと、伝えておけば良かった。
「あの頃のことで後悔してるのは、言わなくても伝わってると勘違いしてたこと。それで勝手に相手も自分と同じ気持ちだと自惚れてたことかな」
ようやく観たい映画を見つけたのか、梶葉くんは再生ボタンを押した。
それは8年前に流行った恐竜の映画だった。
梶葉くんの彼女は、もうすぐ旅行から帰って来る。
「取ってどうするの?」
「食べる」
「食べる? だって毒とかあるかもしれないのに! 名前からして危ない感じがする」
「毒はないよ。名前にヘビがついてるのにはいくつか説があるけど――」
梶葉くんはそこでヘビイチゴの名前の由来について長々と語ってくれた。
「こんなとこで見かけるのはめずらしいから、多分、鳥の糞の中にあった種が育ったんだと思う。イチゴみたいに美味しそうだけど味は全くないらしいんだ。それを自分で確かめたくて」
「へっ?」
「手を伸ばしても届かないから」
フェンスの隙間は狭すぎて腕を入れようにも手首までしか入らない。
「死のうとしたんじゃなかったんだ……」
「そんなことしないよ。さっきの、俺もその通りだと思う。自分から命を断つなんて選択は絶対したらだめなやつ」
「あ――」
その時、どこからか飛んできた鳥が、たった一つしかないヘビイチゴの実を突いて食べてしまった。
「あーーーーーっ! ずっと実がなるまで見守ってきたのに! マジかぁ……」
あまりにも梶葉くんがガッカリするから、失礼だとは思いながら笑った。
そんなわたしを見て梶葉くんも笑った。
「俺は1ーAの梶葉恒。そっちは?」
「1ーDの天津胡桃――って、ゴミ捨ての途中だった! じゃあね、梶葉くん!」
校舎の入り口にゴミ箱を置きっぱなしにしてきたことを思い出して、急いで走ってその場を去った。
「あの日から、俺はずっと天津さんが好きだった」
「そんな理由で?」
「命はひとつしかない。それって当たり前だけど大切なことだろ? 俺と同じように考えてる子がいることを知って嬉しかったんだ」
そんなふうに思ってもらえてたなんて知らなかった。
17歳だった時の梶葉くんにちゃんと好きだと、伝えておけば良かった。
「あの頃のことで後悔してるのは、言わなくても伝わってると勘違いしてたこと。それで勝手に相手も自分と同じ気持ちだと自惚れてたことかな」
ようやく観たい映画を見つけたのか、梶葉くんは再生ボタンを押した。
それは8年前に流行った恐竜の映画だった。
梶葉くんの彼女は、もうすぐ旅行から帰って来る。
