あの日、わたしのせいで里穂さんはせっかく瘡蓋になりかけていた傷を、もう一度パックリとひらくことになってしまった。
4月から就職が決まっていた木嶋さんは、里帆さんが少しでも早く嫌な記憶を忘れることが出来るように、わざわざここから遠い場所へ配属希望を出して、里穂さんを連れて行くことを決めていた。
「こっちは遠いとこでまたやり直すから、もう助けてはやれない。あんたは母親にちゃんと話せ。それまでは2人きりにならないようにしろ。あいつより早く寝ないようにして、自分を守れ」
里穂さんにお礼を伝えてと言いたかったけれど、それは望まれていない気がして木嶋さんにお礼を言った。
「ありがとうございました」
「大丈夫。里穂もわかってる」
別れ際、木嶋さんに「負けるなよ」と言われた。
わたしが知ってしまった事実とどう向き合ったらいいのかわからなかった。
どうすべきかはわかっているのに、お母さんを見ていたらそれが出来ない。
信号はいつも点滅していた。
どこかおかしいと、信号が点滅していたのに、「気のせいだ」と自分に言い聞かせてやりすごしていた。
でもそれが気のせいではないことを知っても、お母さんに言い出せなかった。
言うのは明日にしよう、また今度言おう、と伸ばし続けた。
その間も不安はいつも付き纏っていて、木嶋さんに教えられた通り、あいつとふたりきりにならないようにした。
お母さんが遅番の日だけだと変に思われるといけないと考えて、毎日、放課後真っ直ぐに家へ帰るようにした。そしてあいつが帰って来る前に、お風呂へ入り、ご飯を済ませ、部屋へ閉じこもり、あいつが寝るのを待った。
4月から就職が決まっていた木嶋さんは、里帆さんが少しでも早く嫌な記憶を忘れることが出来るように、わざわざここから遠い場所へ配属希望を出して、里穂さんを連れて行くことを決めていた。
「こっちは遠いとこでまたやり直すから、もう助けてはやれない。あんたは母親にちゃんと話せ。それまでは2人きりにならないようにしろ。あいつより早く寝ないようにして、自分を守れ」
里穂さんにお礼を伝えてと言いたかったけれど、それは望まれていない気がして木嶋さんにお礼を言った。
「ありがとうございました」
「大丈夫。里穂もわかってる」
別れ際、木嶋さんに「負けるなよ」と言われた。
わたしが知ってしまった事実とどう向き合ったらいいのかわからなかった。
どうすべきかはわかっているのに、お母さんを見ていたらそれが出来ない。
信号はいつも点滅していた。
どこかおかしいと、信号が点滅していたのに、「気のせいだ」と自分に言い聞かせてやりすごしていた。
でもそれが気のせいではないことを知っても、お母さんに言い出せなかった。
言うのは明日にしよう、また今度言おう、と伸ばし続けた。
その間も不安はいつも付き纏っていて、木嶋さんに教えられた通り、あいつとふたりきりにならないようにした。
お母さんが遅番の日だけだと変に思われるといけないと考えて、毎日、放課後真っ直ぐに家へ帰るようにした。そしてあいつが帰って来る前に、お風呂へ入り、ご飯を済ませ、部屋へ閉じこもり、あいつが寝るのを待った。
