「最悪なことに眠っていたせいで、簡単に押さえつけられた。最初は何が起きてるのかわからなくて、声も出なかった。でもあいつが……」
里穂さんはそこで数回息を整えると、さっきまでとは違い、軽い口調で話を続けた。
「あいつがわたしの体に舌を這わせてきた時に、このまま思い通りになんかさせないって思った! こう見えて中学まで剣道やってたのよ。あいつのことを気持ち悪いと思い始めてから手の届くところにいつも竹刀を置くようにしてたの。それで返り討ちにしてやった! で、その足で耀司のアパートへ逃げ込んだ」
もし……それが自分だったら……
わたしが容易に想像してしまうことがわかっているから、里穂さんは悍ましい記憶を軽い口調で話してくれた。思い出したくもないことを話してくれている。
「旅行から帰った母親にその時のことを言ったんだけど全然信じてくれなくて。私は母親とあまり仲が良くなかったからね。だから私は母親を捨てた」
その時、戻って来た木嶋さんが里穂さんの隣に寄り添うように立った。
「私が家を出たら、あいつすぐに母親と別れたのよ。笑っちゃうでしょ?」
木嶋さんはそっと里穂さんの震える肩を自分の方へ引き寄せると、頭の上に優しいキスを落とす。
「耀司があなたに声をかけたのは近くで私を見てきたから。耀司がいなかったら私はきっとあの時のことが頭にこびりついて息もできずにいた。まだ間に合う。あなたが私と同じような目にあう必要はない」
里穂さんはもう笑っていなくて、その瞳に嘘はなかった。
とめどなく溢れる涙を見て、わたしに出来たのは自分のハンカチを差し出すことだけだった。
里穂さんはそこで数回息を整えると、さっきまでとは違い、軽い口調で話を続けた。
「あいつがわたしの体に舌を這わせてきた時に、このまま思い通りになんかさせないって思った! こう見えて中学まで剣道やってたのよ。あいつのことを気持ち悪いと思い始めてから手の届くところにいつも竹刀を置くようにしてたの。それで返り討ちにしてやった! で、その足で耀司のアパートへ逃げ込んだ」
もし……それが自分だったら……
わたしが容易に想像してしまうことがわかっているから、里穂さんは悍ましい記憶を軽い口調で話してくれた。思い出したくもないことを話してくれている。
「旅行から帰った母親にその時のことを言ったんだけど全然信じてくれなくて。私は母親とあまり仲が良くなかったからね。だから私は母親を捨てた」
その時、戻って来た木嶋さんが里穂さんの隣に寄り添うように立った。
「私が家を出たら、あいつすぐに母親と別れたのよ。笑っちゃうでしょ?」
木嶋さんはそっと里穂さんの震える肩を自分の方へ引き寄せると、頭の上に優しいキスを落とす。
「耀司があなたに声をかけたのは近くで私を見てきたから。耀司がいなかったら私はきっとあの時のことが頭にこびりついて息もできずにいた。まだ間に合う。あなたが私と同じような目にあう必要はない」
里穂さんはもう笑っていなくて、その瞳に嘘はなかった。
とめどなく溢れる涙を見て、わたしに出来たのは自分のハンカチを差し出すことだけだった。
