冷たい月と星天のクロノグラフ

待ち合わせ場所に指定されたのは郊外にある公園で、遊具もなくがらんとしたところだった。バス停から坂道をかなり上がったところにあって、小高い場所にあるから見晴らしはいいのだけれど、冬だから寒くて人もいない。

約束の時間の15分前に着いて待っていると、木嶋さんは時間より少し遅れてやって来た。
ショートカットの綺麗なひとが一緒で、このひとが木嶋さんの彼女ということ。

真っ直ぐにわたしのところまでやって来ると、小さく頭を下げられた。

「里穂です」

「胡桃です」

わたしも名前だけを告げて頭を下げた。

「オレは向こうでちょっと電話して来る」

里穂さんが木嶋さんに小さく手を振ると、木嶋さんもそんな里穂さんに優しい笑みを返した。

いきなり初対面のひととふたりきりになって、どこから話を切り出したらいいんだろう、と戸惑っていたら里穂さんの方から話しかけてくれた。

「いい物見せてあげる」

里穂さんはスマホを操作すると画面をわたしに向けた。
そこに表示されていた写真は木嶋さんと……里穂さん?

「昔の私。あなたに似てない?」

顔は全然違う。
でも今とは違って黒くてストレートのロングヘアをした里穂さんは、同じ髪型のせいか雰囲気がわたしと似ているように感じた。

「きっとあの男のタイプ。あいつが本当に好きなのは女子高生。でも援交じゃ物足りなくなって、そのくらいの女の子がいる母親に目をつけるようになったのね」

里穂さんの言ってることが頭に入ってこない。
それじゃあまるで……

「わたしの母親もあいつと付き合ってた。でもあいつの対象は、本当は別のところにあったの」

「対象が違う」と、木嶋さんは以前わたしに言った。

「酒を飲んでる時がやばい。自制心がぶっ飛ぶから」

すぐにあの夜のことを思い出した。

あいつは、お母さんと3人でご飯を食べに行った時もお酒はな飲まなかったし、会社の忘年会でも新年会でもお酒を飲んで帰って来ることはなかった。

でも、あいつが部屋に入って来た日はお酒を飲んでいた。