冷たい月と星天のクロノグラフ

初詣は元旦に友達と行ったけれど、義父の提案でもう一度3人で行って、食事をして帰ることになった。

「胡桃はこの春から受験生だし、ご利益はいくつあってもいいでしょ?」

そんなことを言うお母さんに、義父もわたしも笑った。

「胡桃ちゃんは行きたい大学がもう決まってるのかな」

「まだ考え中」

「そんなこと言ってたらあっという間に1年が経つんだから!」

「ゆっくり時間をかけたらいいよ。決められなければずっと家にいればいいんだから」

「聡さんは娘に甘すぎます」

「娘はいくつになってもかわいいって言うじゃないか」

本当の娘でもないのにまるで自分の娘のように言う義父と、それを注意するお母さんのやり取りに、わたしはのんきに笑っていた。


義父は、離婚歴があるひとだったけれど、その理由をわたしにもきちんと説明してくれた。
別れた奥さんは不倫の末、子供を連れて出てい行ったらしい。仕事が忙しくて家のことを全部任せきりにしていた自分にも問題があったから、奥さんだけを責めることは出来ないと、慰謝料も請求しなかったと聞いた。そして、「今度こそ家族を大切にしたいんだ」と、お母さんとわたしに言った。

友達から聞く父親の話は、「スカートが短いって言われた」とか「髪の毛にばかり時間をかけてないで勉強しろ」だとか、そんなグチばかりだったから、いきなり家族になった義父はどうなんだろう?と不安でもあった。
でも、義父からは友達が言うようなお小言を言われることもなく、時々じっと見られている視線を感じるくらいのものだった。それについてもある日、理由を教えられた。

「別れた元奥さんとの間にいたのは娘でね、今の胡桃ちゃんくらいの年なんだ。だからつい、自分の娘もこんな感じなのかな……って感傷にひたってしまうんだ」

「会ったりしないの?」

「どこにいるのかもわからないからね……でも今は胡桃ちゃんがいるから」

わたしのお父さんは小学生の頃に亡くなったお父さんひとりしかいない。
お母さんが結婚して天津から月埜という名字に変わったことも密かに寂しく思っていた。
でも、義父も家族のことで辛い思いを抱えてるんだと思うと、血の繋がらない「おとうさん」がいてもいいのかもしれないと思うようになっていた。