冷たい月と星天のクロノグラフ

梶葉くんの言葉の意味を理解するのに時間はそうかからなかった。

わたしが住んでいたらしいマンションは、見事に駐車場となっていた。

「知ってたの?」

「天津さんの気が変わって、行きたいと言った時にすぐ連れて来てあげられるように調べた」

「高校にも行ったんだけどね、知ってるものが何もなかった。制服だって、新しいのでも古いのでもどっちを着てもいいみたいなのに、セーラー服を着てる子はいなかった」

「今はどこもブレザーが多いみたいだから」

梶葉くんに嘘をついてここまで来たのに、何も解決しなかった。

「あのさ、もっと俺を信用してよ。言いたくないことを無理に聞こうとは思わないけど、何を聞いても俺は変わらないよ」

今日はエイプリルフールだけど、梶葉くんのその言葉に嘘はない。

「帰ろう」

「うん……」


駅前で梶葉くんは「ここだけ寄り道させて」と言って隣接する本屋へ入って行った。
「今は本屋が少ないから」と言って梶葉くんは何冊か手にとって中を見た後、数冊の本を買った。

「半分持って。重いから」

手提げを片方づつ持って歩いたけれど、荷物はちっとも重くない。

これは、罪のない嘘?

手をつなぐ代わりなのかな……なんて思ったりした。


その日、初めて口にしたのは新幹線の駅で売っていたお弁当で、それはとても優しい味がした。