冷たい月と星天のクロノグラフ

ほとんど眠れないまま空が明るくなった。

洗面所へ行って鏡で自分の顔を見ると、殆ど寝ていないから疲れ切ってみえる。
バシャバシャと顔を洗い、歯を磨いてもう一度鏡を見ると、少しはマシになった。

大きく深呼吸をしてからリビングへ行くと、梶葉くんは既に起きていてコーヒーを飲んでいた。
聞いてはいたけど、本当に早起き。

「おはよう」

「おはよう。あのね……ちょっとからだがだるくて、引き込もってていい?」

真っ直ぐに顔を見ることが出来なくて、俯いたまま言葉を絞り出した。

「それは、うん。どんな感じ? 熱は?」

「熱はない。多分、疲れたんだと思う」

「そっか。ちょっと待ってて」

今日はエイプリールフールで、「罪のない嘘」をついてもいいとは言われているけれど、わたしのこの嘘は罪だらけ。ごめんなさい、と心の中で謝っていると、梶葉くんがタブレットを持って戻って来た。

「暇になったらこれ見たらいいよ。映画も、電子書籍も見られるから持って行って。何か食べたい物があったら電話してくれたら届けるよ」

「ありがとう」

タブレットを受け取って、寝室へ戻った。

どこまでも優しい梶葉くんにずっと胸が痛い。

寝室のドアを少し開けて、そのままじっと待っていると、洗面所のドアが開く音がした。
それでそっと廊下へ出て、そのまま静かに靴を履き、玄関から外へ出た。


住んでいた場所は思い出せないけれど、わたしが桜ノ宮高校へ通っていたことは梶葉くんが教えてくれた。
だから名前と制服で検索したら高校の場所がわかった。

「使ったお金は働いて返します」

これは嘘にしたくない。
スマホに頭を下げてから、アプリの地図を頼りに新幹線のチケットを買った。