冷たい月と星天のクロノグラフ

「わたしのことも聞いていい?」

「答えられることなら」

「わたしの名字が天津から月埜になったのは両親が離婚したから?」

「違うよ。天津さんの父親は小学生の頃亡くなったって聞いた。高2の冬に母親が再婚して月埜の名字に変わったんだ。その時に家も引越して、俺とは反対方向になったんだ」

名字が変わったのはお母さんの離婚ではなく再婚……

「天津さんは亡くなった父親のことが大好きだったから名前が変わることを気にかけてたけど、一方で父親の名前に固執していたら母親にも新しい父親にも悪い気がするとも言ってた」

「お母さんの再婚相手ってどんなひとか知ってる?」

「会ったことはないけど、俺が聞いた時は『いいひと』って」

「わたしは梶葉くんに何でも話してたんだね」

今はわたしより梶葉くんの方がわたしのことを知ってるみたい。

「何でもってわけじゃない。知らないこともいっぱいあったから」

「……わたしが……梶葉くんを避けてた理由……とか?」

「それは、知ってた」

「え?」

穏やかな笑みを浮かべる梶葉くんに戸惑う。

「高2のGW明けくらいから天津さんとは放課後に宿題しながら残って話をするようになったんだ。それで下校時間が来たら途中まで一緒に帰ってた。でも年が明けてしばらくしたら、天津さんは授業が終わると急いで帰るようになって……彼氏が出来たと聞いた」


彼氏?


「わたしがそう言ったの?」

「富田さんを覚えてる? 天津さんが一番仲良かった女子。その子から聞いた。それに、俺も実際に天津さんが大学生っぽい男と一緒にいるところを見たし」