「私の知ってる夏目先生は彼を殺したりしないっ! 女がそそのかしたに決まってる!」
殺す――って……このひとの恋人を梶葉くんが殺したってこと?
それも誰かにそそのかされて?
「彼のいない人生なんて考えられないの……彼がいたからわたしは生きてこれたの……どんなに嫌なことがあても、宗くんがいたから……」
宗くん……?
そう言えば、さっき女性は梶葉くんのことをペンネームで呼んだ。しかも「先生」をつけて。
「あのぉ、宗くんって、もしかして宗次郎のこと? 『深い森の中で』の本で崖から落ちて行方不明になった主人公の宗次郎?」
女性は「他に誰がいるって言うのよ」と、ムッとしたように呟く。
「あれって、死んだんじゃないですよ!」
「嘘よ! テキトーなこと言わないで! だったらどうして次の連載が全然別の話になってんのよ! 夏目先生は宗次郎くんを殺したのよ!」
わたしを女性から隠すようにして立っている梶葉くんの服の裾をぎゅっと掴んでから、彼女に向かって言った。
「シャーロック・ホームズもモリアーティ教授と滝壺に落ちて死んだかと思われたけど、実は生きてたんですよ。シャーロック・ホームズを知ってますか? あれと同じなんです」
「……でも『宗次郎衝撃のラスト』って、宣伝されてたし……新作の帯に『新たなヒロイン誕生』って……」
掴んでいた梶葉くんの服を引っ張ると、梶葉くんはこれみよがしに大きなため息をついてみせた。
「この話は僕と君だけの秘密ということにしてくれる?」
その一言に女性の顔はみるみる高揚して、さっきまで怒りに満ちていた瞳が潤む。
「言いません! 絶対に言いません! ごめんなさい……なんてことを……私ったら先生の大大フアンなのに意図を汲み取れなくて……」
「もう、二度とこんなことはやめてほしい」
「執筆に影響が出ちゃうみたいですよ」
わたしが付け加えると、女性はハッとした顔をして、「二度とつきまとったりしません! 約束します!」と叫び、深々と頭を下げると走り去って行った。
殺す――って……このひとの恋人を梶葉くんが殺したってこと?
それも誰かにそそのかされて?
「彼のいない人生なんて考えられないの……彼がいたからわたしは生きてこれたの……どんなに嫌なことがあても、宗くんがいたから……」
宗くん……?
そう言えば、さっき女性は梶葉くんのことをペンネームで呼んだ。しかも「先生」をつけて。
「あのぉ、宗くんって、もしかして宗次郎のこと? 『深い森の中で』の本で崖から落ちて行方不明になった主人公の宗次郎?」
女性は「他に誰がいるって言うのよ」と、ムッとしたように呟く。
「あれって、死んだんじゃないですよ!」
「嘘よ! テキトーなこと言わないで! だったらどうして次の連載が全然別の話になってんのよ! 夏目先生は宗次郎くんを殺したのよ!」
わたしを女性から隠すようにして立っている梶葉くんの服の裾をぎゅっと掴んでから、彼女に向かって言った。
「シャーロック・ホームズもモリアーティ教授と滝壺に落ちて死んだかと思われたけど、実は生きてたんですよ。シャーロック・ホームズを知ってますか? あれと同じなんです」
「……でも『宗次郎衝撃のラスト』って、宣伝されてたし……新作の帯に『新たなヒロイン誕生』って……」
掴んでいた梶葉くんの服を引っ張ると、梶葉くんはこれみよがしに大きなため息をついてみせた。
「この話は僕と君だけの秘密ということにしてくれる?」
その一言に女性の顔はみるみる高揚して、さっきまで怒りに満ちていた瞳が潤む。
「言いません! 絶対に言いません! ごめんなさい……なんてことを……私ったら先生の大大フアンなのに意図を汲み取れなくて……」
「もう、二度とこんなことはやめてほしい」
「執筆に影響が出ちゃうみたいですよ」
わたしが付け加えると、女性はハッとした顔をして、「二度とつきまとったりしません! 約束します!」と叫び、深々と頭を下げると走り去って行った。
