冷たい月と星天のクロノグラフ

今朝も目が覚めるとまだ梶葉くんのマンションにいた。

ベッドから出てカーテンを開けると青空が広がっている。

廊下に出ると、まだどこもかしこも静まり返っていたので、梶葉くんを起こさないようにそっとリビングへ向かった。
リビングのカーテンを開けると、遮るものがないから遠くまで景色が見渡せる。
このマンションはL字型をしていて、角にある梶葉くんの家からはいろんな方向の空が見える。
きっとそれがここを選んだ理由。

窓を開けると少し冷たい空気が部屋の中を通り抜けた。


今日で未来(ここ)へ来て3日間目になる。
もしこのまま二度と過去へ戻れないのなら、ここで生きていく方法を考えなければいけない。
と言っても、高3になる前にこっちへ来てしまったから高校は中退で、身分を証明する物もない。
そんな自分を雇ってくれるところがあるとも思えないけれど、梶葉くんに頼りっぱなしではいられないし、ずっとここにいるわけにはいかない。

今の自分には何が出来るんだろう……?


「おはよ」

振り向くと、紙袋を掲げた梶葉くんがいる。

「リベンジしてパンを買って来たから食べよう」

「おはよう。また徹夜?」

「早起き」

「作家さんっていうのは昼夜逆転の生活をしてるんだと思ってた」

「すごい偏見。俺は基本的に朝起きて夜寝るよ。天津さんが来た日に徹夜したのはたまたま。彼女は普通に働いてるから、そうしないと一緒にいる時間が減るしね」

また、ちくりと胸が痛くなる。

「彼女さんは仕事してるの?」

聞かなければいいのに聞いてしまう。

「俺に頼りっぱなしは嫌なんだってさ」


ほらね。
彼女の話になると梶葉くんは彼女を思い出して頬が一気に緩む。
それを見てわたしはずきずきと心に痛みを重ねるんだ。