冷たい月と星天のクロノグラフ

梶葉くんの買ってくれたものは服だけじゃなかった。服に似合う靴も、バッグまであった。
それにメイク道具も一通りあって、こんなのどうやって選んだのかと思ったけれど、その答えはわかっていたから聞かなかった。
嬉しくて嬉しくて仕方ないのに、同時に胸がぎゅっと苦しくなる。

わたしはどうしてここにいるんだろう?
8年後の未来にやって来た理由が単なる神様のイタズラだとしたら、神様はイジワルだ。



寝室の窓を開けて夜空を見ると、きれいな月とたくさんの星が輝いていた。

その星を見ながら、梶葉くんと交わした会話を何度も頭の中で繰り返す。


――俺は天津さんに会うために生まれて来たようなものだからさ――


梶葉くんにとっては何でもない言葉も、行為も、わたしにとっては全てが特別で、この気持ちに名前をつけるなら「片想い」。片方だけが相手のことを想ってるという、小学生でも知っている言葉。


隣からはまた梶葉くんが誰かと電話をしている声が聞こえる。

「今日……あのケーキを買ったんだ……そう、胡桃の……」

それ以上聞きたくなくて静かに窓を閉めた。


彼女と別れているのか、別れていないのかなんて関係ない。
梶葉くんの心の中にわたしは入れない。きっとこれからもそれは変わらない――