冷たい月と星天のクロノグラフ

ガクンとからだが落ちる感覚で目を開けると、壁にもたれかかるようにして石段に座っていた。
また知らない場所で、公園なのか真ん中に噴水があって、それを囲むように石段がある。ところどころコンクリートの植え込みがあって、背の低い木が植えてあった。
わたしはその鉢植えがわりのコンクリートに寄りかかっていたらしい。
周りには誰もいない。

ゆっくりとからだを起こし自分の姿を見ると、セーラー服を着ているのにスカーフはしていない。靴を履いていないから、紺色の靴下は砂埃で白っぽく汚れている。


靴はどうしたんだろう?


ぼんやりと足元を見つめていると、後ろから足音が近づいて来て、わたしの横を通り過ぎた。

「水を買って来た」

顔を上げると、正面にいたのは知らない男性で、その手にはペットボトルを持っている。

「大丈夫? ちゃんと誰も近付かないのを向こうから見てたから」

指をさされた方には自販機のコーナーがあった。

男性にペットボトルを差し出されけれど、誰なのかもわからないひとから渡されるものを口に入れたくなくて首を振った。
せっかく買いに行ってくれたものを無碍にしたのに、男性はわたしのそんな態度に気を悪くするわけでもなく、そのペットボトルをわたしの座っているすぐ隣に置いた。


いつからスカーフをしていないんだろう?


「……わたしのスカーフは?」

「スカーフ? 最初からしてなかったけど?」


その言葉を信じていいんだろうか?