冷たい月と星天のクロノグラフ

誰かが推した再生ボタンで頭の中に映像が流れる。



学校の廊下を走っているからか、左右の景色が流れていく。
ぎゅうぎゅうと他の生徒に押されながら、手を伸ばしてパンの袋を取る。
悩んだり、選んだりする時間なんてないパンの争奪戦。


パンだけは昼休憩にしか売っていなかったから、午前中の授業が終わると同時に売店へ走ってた。



「……覚えてる」

「これはどう?」

ビニールの中には、いちごの果肉が入ったヨーグルトも入っていた。


ヨーグルトの中では、いちごの果肉が入ったものが一番好きで、二番目はアロエが入ったもの。


「わたしが好きなものをよく知ってるね」

「天津さんのことはよく見てたから――って、今の発言はキモいか」

「そんなことないよ」


突然、男性の顔が浮かんだ。



金髪の男性がわたしに向かって何か言っている。
髪の色だけじゃなくて服装も派手なその男性は、わたしを睨みつけてしきりに何か言い続けている。
音がないからわからないけれど、怒ってることだけは確かで、単にぶつかったとかそういう理由で怒ってるんじゃないというのもなんとなくわかる。


このひとは誰だろう?



「俺はシャワー浴びて来るから、天津さんは食べてて」

「え? あ……待ってていい?」

「うん。それはいいけど。そんなに俺と一緒がいい?」

梶葉くんがこういう冗談を言う人だったなんて知らなかった。
それとも忘れてるだけで、元からこんな感じだったの?

「うぬぼれないでくださーいっ。暇だからでーす」

わたしが可愛げないのは、多分元から。

「なんだ、そっか。残念」


高校生だった時の梶葉くんは、こんなわたしのどこを好きだと思ってくれたんだろう?