冷たい月と星天のクロノグラフ

目が覚めると、外は雨が降っていた。
昨日、夜空に星が見えなかったのは雲が空を覆っていたせいだったんだ。

リビングにも洗面所にも梶葉くんの姿はなかったので寝ているのかもしれないと思い、そっとキッチンに行って、勝手に開けていいと言われた冷蔵庫を上の段から見ていった。

冷蔵庫にはお水とビールの他には、昨日コンビニで梶葉くんが買っていた牛乳しか入っていない。
野菜室ににんじんを見つけたくらいで、冷凍庫も空。

キッチンにある棚を端から開けてみたら、カトラリーが入っている引き出し以外は見事に空っぽだった。

その時、玄関の方からガチャっという音がして、誰かが外から入って来た。
「旅行に行っている彼女」が急遽帰って来たのだったら鉢合わせしてしまう。隠れるところもなくてキッチンの隅にしゃがんだら、「うわっ」という相手の驚く声に、わたしまで驚いて尻餅をついた。

「寝てるのかと思ってた」

「びっくりした。梶葉くんの方こそ寝てるんだと思ってた」

手を差し出されたので、その手を掴んで立ち上がった。

「濡れてる……」

梶葉くんの腕から水が滴っている。

「横殴りの雨で傘が意味をなさなかったから」

「雨の中出かけてたの? 早起きなんだね」

「徹夜明け。駅の向こうにあるパン屋へ焼きたてのやつを買いに行ったら、まさかの臨時休業だった。ごめん」

謝るところじゃないのに、梶葉くんは申し訳なさそうな顔をする。

「代わりに天津さんがよく食べてたやつをコンビニで見つけたから買って来た。俺が中学の時にもあったから、ロングセラーってやつだよな」

それはデニッシュ生地にアイシングがかけてあるパンで――


お弁当を持って行かなかった日は売店でそのパンを買っていた。