冷たい月と星天のクロノグラフ

ベッドへ横になって目を閉じ、「次に目が覚めたら自分のベッドにいるかもしれない」と考えた時、再びゾワっと不快な感覚が襲ってきた。

わたしは自分の家へ帰りたくないと思っている。
でも、それがなぜなのかはわからない。
不安の原因は、ここが8年後の世界だということだけではない気がする。

寝付けなくて何度も寝返りをうった。

眠れそうになくて寝室にあるカーテンを開けると、空は真っ黒で星ひとつ見ることが出来ない。
ベランダへ出たら見えるかもしれないと、窓を開けたところで隣の部屋にいる梶葉くんの声が聞こえた。
誰かと電話で話をしているっぽい。
部屋の中を動き回りながら話しているのか、言葉が聞き取れたり聞き取れなかったりする。
盗み聞きは良くないと、窓を閉めようとしたしたところで、梶葉くんが電話の相手に優しい声で言うのが聞こえた。


「愛してる」


誰に言ってるの?


「……そんな笑うなよ。いつも言わせてる側だから、自分で言ってみたくなるんだって」


いつも言わせてる側?


盗み聞きなんて良くないとわかっていながらも、その場から離れられない。
その後は部屋の奥へ戻ってしまったようで、何か話していたけれど聞き取れなかった。そして窓を閉める音と「はいはい、やりますよ」と言うのを最後に何も聞こえなくなった。


梶葉くんには、「愛してる」といつも言わせている相手がいる。
それはやっぱり彼女? それとも……別の誰か?