向かい合ってコンビニのパスタを食べるのは変な感じ。
「引越ししたのはどうして?」
パスタを頬張っていた梶葉くんは「あー」と言う顔をして天を仰いだ。
「ストーカー」
「へっ? ストーカー?」
予想外の答えに変な声が出た。
「そ。俺って意外と人気者らしい」
「はいはい」と、どうでもいいような返事を返す。
目の前の梶葉くんはアイドルやモデルとまではいかないけれど、わたしの知っている梶葉くんと違って、確かにかっこ良くなった。「メガネをとったら美人だった」パターンみたいに、それだけで人の印象というのは随分変わるみたい。
急に何かの記憶が戻ってぼんやりしていただけなのに、「ほら、天津さんも俺に見惚れるくらいフアンになったろ?」と言われ、テーブルの下で足を蹴ろうとしたのだけれど、目一杯伸ばしても足先は空を切るだけで届かない。それはテーブルが大きいこともあるけれど、梶葉くんが足を伸ばして座っていないから。
狭いテーブルの上にホットケーキののったお皿と蜂蜜。
足先に誰かの足の感触。
それは酷く不快で、逃げ出したいのに逃げないでいる。
これは何の記憶?
「前に住んでたところは元々古いマンションだったから引越しするつもりではいたんだけど、急遽引越し日を決めたから大変だった。聞いてる?」
梶葉くんの声で、また飛んでいた意識が戻ってきた。
「聞いてるよ」
「家の中の物は自由に使っていいけど、冷蔵庫の中のビールは飲んだらだめ。天津さんは未成年だから」
「そんなのわかってるよー」
「仕事が残ってるから2日待ってもらえれば、住んでたところまで連れて行ってあげるよ。ここからはだいぶ遠いから日帰りは難しいけど」
行きたくない。そこへは戻りたくない。
なぜかそう思った。でもなぜなのかは説明出来そうにない。
頭を振ると、「気が向いたら教えて」と言われただけだった。
「何かして欲しいことある?」
「して欲しいというか……使ってないノートがあったら欲しい。あと筆記用具も。思い出したことを書いていきたい」
「使ってないタブレットがあるけど、それを貸そうか?」
「出来れば紙の方がいい」
「わかった。後でドライヤーと一緒に渡すよ。いるでしょ? 前は使ってなかったんだけど、今は使わないでいると『風邪をひく』って、彼女が怒るから使うようになったんだ」
梶葉くんは左の薬指に指輪をしていて、彼女とのことを現在進行形で話す。
でも洗面所には歯ブラシが1本しかなかった。色はブルーだったから梶葉くんの物っぽい。
一緒に住んでいて歯ブラシがないなんてことがある?
それに、クローゼットに入れられてない服。
あちこちに違和感がある。
彼女とは別れてるんじゃないかと思うけど、「本当は彼女いないんでしょ?」とは聞きにくい。
「引越ししたのはどうして?」
パスタを頬張っていた梶葉くんは「あー」と言う顔をして天を仰いだ。
「ストーカー」
「へっ? ストーカー?」
予想外の答えに変な声が出た。
「そ。俺って意外と人気者らしい」
「はいはい」と、どうでもいいような返事を返す。
目の前の梶葉くんはアイドルやモデルとまではいかないけれど、わたしの知っている梶葉くんと違って、確かにかっこ良くなった。「メガネをとったら美人だった」パターンみたいに、それだけで人の印象というのは随分変わるみたい。
急に何かの記憶が戻ってぼんやりしていただけなのに、「ほら、天津さんも俺に見惚れるくらいフアンになったろ?」と言われ、テーブルの下で足を蹴ろうとしたのだけれど、目一杯伸ばしても足先は空を切るだけで届かない。それはテーブルが大きいこともあるけれど、梶葉くんが足を伸ばして座っていないから。
狭いテーブルの上にホットケーキののったお皿と蜂蜜。
足先に誰かの足の感触。
それは酷く不快で、逃げ出したいのに逃げないでいる。
これは何の記憶?
「前に住んでたところは元々古いマンションだったから引越しするつもりではいたんだけど、急遽引越し日を決めたから大変だった。聞いてる?」
梶葉くんの声で、また飛んでいた意識が戻ってきた。
「聞いてるよ」
「家の中の物は自由に使っていいけど、冷蔵庫の中のビールは飲んだらだめ。天津さんは未成年だから」
「そんなのわかってるよー」
「仕事が残ってるから2日待ってもらえれば、住んでたところまで連れて行ってあげるよ。ここからはだいぶ遠いから日帰りは難しいけど」
行きたくない。そこへは戻りたくない。
なぜかそう思った。でもなぜなのかは説明出来そうにない。
頭を振ると、「気が向いたら教えて」と言われただけだった。
「何かして欲しいことある?」
「して欲しいというか……使ってないノートがあったら欲しい。あと筆記用具も。思い出したことを書いていきたい」
「使ってないタブレットがあるけど、それを貸そうか?」
「出来れば紙の方がいい」
「わかった。後でドライヤーと一緒に渡すよ。いるでしょ? 前は使ってなかったんだけど、今は使わないでいると『風邪をひく』って、彼女が怒るから使うようになったんだ」
梶葉くんは左の薬指に指輪をしていて、彼女とのことを現在進行形で話す。
でも洗面所には歯ブラシが1本しかなかった。色はブルーだったから梶葉くんの物っぽい。
一緒に住んでいて歯ブラシがないなんてことがある?
それに、クローゼットに入れられてない服。
あちこちに違和感がある。
彼女とは別れてるんじゃないかと思うけど、「本当は彼女いないんでしょ?」とは聞きにくい。
