自分がどこに立っているのかわからなくて、その場でくるりと一周しながら辺りを見渡した。
大勢の人が四方八方から現れては思い思いの方向へ向かって通り過ぎて行く。
まるでわたしなんて存在していないかのように、誰ひとり気にかけて立ち止まる人も、振り返る人もいない。
ここには音がない。
おまけに見るもの全てがモノクロで、途方にくれて見上げれば、ビルに囲まれた四角い空があるだけだった。
トンっと、誰かと肩がぶつかって一歩踏み出すと、つま先に固いアスファルトの感触があった。
足元を見れば、靴下だけで靴を履いていない。
濃いグレーとところどころ掠れた白い線が、行き交う人の隙間に見える。
わたしが立っている場所は――
「信号が変わる」
突然、声が聞こえたかと思うと、色と音が一気に頭の中へなだれ込んできた。
話し声や、どこからか聞こえる音楽。
そんな中で自分が息を吐く音がやけに大きく聞こえて、くらくらと足元から崩れ落ちそうになったところを誰かに支えられた。
あふれ返っていた人はいつの間にかいなくなっていて、代わりに視界に飛び込んできたのはビルの広告。
どこもかしこも色で溢れている。
「ここ……どこ?」
「どこ――って……スクランブル交差点のど真ん中」
わたしを支えている手が知らない男性のものだと気がついてもがいた。その薬指に指輪が光っている。
「君――」
「……わたし……どうして……」
「救急車を呼ぶか……何か事件に巻き込まれたのなら警察に――」
警察という言葉に全身が強張った。
「……嫌……お願い」
「とにかくここにいたら危ないから歩道まで移動しよう。歩ける?」
……これは……夢……
頭の上で誰かが何か言っている。
だけど、何を言ってるのかわからない。
やがてからだがふわりと浮いて、ゆりかごみたいにゆらゆらと揺れ始めた。
このまま眠っていたい。
このまま……全てを忘れて眠らせて。
お願い。
大勢の人が四方八方から現れては思い思いの方向へ向かって通り過ぎて行く。
まるでわたしなんて存在していないかのように、誰ひとり気にかけて立ち止まる人も、振り返る人もいない。
ここには音がない。
おまけに見るもの全てがモノクロで、途方にくれて見上げれば、ビルに囲まれた四角い空があるだけだった。
トンっと、誰かと肩がぶつかって一歩踏み出すと、つま先に固いアスファルトの感触があった。
足元を見れば、靴下だけで靴を履いていない。
濃いグレーとところどころ掠れた白い線が、行き交う人の隙間に見える。
わたしが立っている場所は――
「信号が変わる」
突然、声が聞こえたかと思うと、色と音が一気に頭の中へなだれ込んできた。
話し声や、どこからか聞こえる音楽。
そんな中で自分が息を吐く音がやけに大きく聞こえて、くらくらと足元から崩れ落ちそうになったところを誰かに支えられた。
あふれ返っていた人はいつの間にかいなくなっていて、代わりに視界に飛び込んできたのはビルの広告。
どこもかしこも色で溢れている。
「ここ……どこ?」
「どこ――って……スクランブル交差点のど真ん中」
わたしを支えている手が知らない男性のものだと気がついてもがいた。その薬指に指輪が光っている。
「君――」
「……わたし……どうして……」
「救急車を呼ぶか……何か事件に巻き込まれたのなら警察に――」
警察という言葉に全身が強張った。
「……嫌……お願い」
「とにかくここにいたら危ないから歩道まで移動しよう。歩ける?」
……これは……夢……
頭の上で誰かが何か言っている。
だけど、何を言ってるのかわからない。
やがてからだがふわりと浮いて、ゆりかごみたいにゆらゆらと揺れ始めた。
このまま眠っていたい。
このまま……全てを忘れて眠らせて。
お願い。
