冷たい月と星天のクロノグラフ

「取り敢えず、うちにおいで」

「え?」

「天津さんをこのままここに置いていくことは出来ないし、俺といたらまた何か思い出すかもしれないでしょ?」

確かに梶葉くんと会ってからの短い時間の中で既にいくつか記憶が戻った。
もっと長く一緒にいれば、案外早く残りの記憶も戻るかもしれない……とは思うけど……

「ごちゃごちゃ考えたって仕方ないだろっ。ほーら、行こう!」

梶葉くんが立ち上がったので、つられて立ち上がった。

「考えたって、こんなのどーにもなんないんだからさ」

「ポジティブなんだね」

とんでもないことが起きてるというのに、梶葉くんはそれをあっさりと受け入れて、何でもないことみたいに言うから、心の中がずーんと重かったのに少し軽くなった。

「前向きなのが俺のいいとこ。ついでにへこたれないとこも」


一緒に歩くのは……初めてじゃない気がする。
歩く速さも、並んだ時の距離感も居心地がいい。


「天津さんとは、よく一緒に帰ったよね」

「一緒に帰る約束は有耶無耶になったんじゃなかった?」

「あの雨の日事件のだいぶ後に仲良くなって、放課後に図書室で宿題やったりしてさ、その後一緒に帰ってた。最初に見せた写真を撮ったのはその頃。思い出す順番がぐちゃぐちゃみたいだから、こんがらがってるのかも」


もしかしてわたし達は付き合ってた?
でも何かの理由で別れて、それが未練でわたしは梶葉くんの名前だけ覚えてたとか?
あ……でもでもさっき梶葉くんの方が「フラれた」って。それだとわたしがフったことになる。