冷たい月と星天のクロノグラフ

目の前にいる梶葉くんは、あの頃の梶葉くんと外見が全く違う。
メガネはかけてないし、髪の毛は少し長め。おまけに色だって茶色い。

「わたしに傘を貸したせいで梶葉くんは風邪をひいて学校を休んで、その後も声が出なくなったことがあったよね? だから梶葉くんとやりとりするために、メッセージIDを交換した」

「恥ずい理由だったけど、電話番号もGET出来たから俺にとってはラッキーな結果で喜んだ」

次々と梶葉くんとの記憶が蘇ってくる。

「声が出るようになってから何かお礼がしたいと言ったら、『一回だけでいいから一緒に帰ろう』って言われて……」

「けど、約束してた日は台風のせいで学校が3日ほど休みになって、その後すぐに文化祭の準備が始まったから……」

わたしの記憶と目の前の男性の記憶が交差する。

「確か、そのまま約束は有耶無耶になったんだよね?」

「……傘のことも、その後のことも……俺は誰にも言ってない」

わたしも天津という名前への想いを話した相手は梶葉くんだけだとハッキリ断言できる。

「やっぱり……梶葉くんなんだね……」

「本当に、天津さんなんだ」

「こんなバカみたいな話信じてくれるの?」

「信じるよ。天津さんの言うことだから」


そこにあったのは、わたしがよく知っている笑顔だった。