冷たい月と星天のクロノグラフ

急に降り始めた雨に、どこかの家の軒下で雨宿りをしていると梶葉くんが走って来て隣に立った。

「止みそうにないね」

空はどんどん黒い雲で覆われていくばかりで、雨は止むどころか激しくなっていくばかりだった。

「天津さんの髪濡れてる」

「そういう梶葉くんも濡れてるよ」

「俺のは短いから」

確かに梶葉くんの髪は短くて、濡れてると言ってもタオルで少し拭けば簡単に乾きそうだった。
でもメガネは違う。ガラスが濡れていて、そんな状態で見えてるのか疑問に思った。

「ハンカチを持ってないから……」

そう言うと梶葉くんは自分のリュックの中から体操服を取り出してわたしの頭の上にかぶせた。

「大丈夫だよ! この体操服、着てないからきれい……だと思って」

「い、いいよ」

「天津さんが風邪をひいたら嫌だから」

梶葉くんはわたしの頭の上に置いた体操服をとんとんと優しくたたくようにして、髪の毛を拭いてくれた。

「じ、自分でやる。ありがとう」

「これもあげる」

渡されたのは折りたたみ傘で、どうして傘を持ってるのにささなかったのか、聞こうと思った時にはもう梶葉くんは雨の中を濡れるのもお構いなしに走って行ってしまった後だった。
それはまるで少女漫画のワンシーン。

セオリー通りなら、洗った体操服と傘を返したところでふたりの関係に進展があったりするのだけれど、梶葉くんは次の日から1週間ほど風邪をひいて学校を休んだ。しかも熱が下がって学校へ来ても、風邪のせいで扁桃腺が酷く腫れたらしく、しばらくは声が出ない状態が続いた。
わたしのせいだと思うと、恋心が芽生えるより申し訳ないという気持ちが勝ってしまい、顔を見る度に謝った。