冷たい月と星天のクロノグラフ

見せてもらった写真の、ジャージ姿の女の子はわたしで間違いない。



クラスマッチの日、スポーツが得意ではない梶葉くんとわたしは、クラスの応援を抜け出して、教室でたわいもない話をしていた。

「写真を撮っとこうよ。見た目だけならスポーツ出来そうに見えなくもないし」

「変な理由」

「想い出の1枚ってやつだよ。ほら、笑って」

梶葉くんが向けるカメラに向かって、ふたりして笑ったまでは良かったけれど、インカメになってなかったからズレていることに気がつかなくて、撮れた写真は頭の先が切れてしまった。

「撮り直す?」

「これもいい想い出」

「わたしにも送って」

「いいよ」


写真なんていつでも撮れると思ってたからか、梶葉くんとふたりで写った写真はその1枚きり――



ついさっきまで何も思い出せないでいたのに、写真を1枚見ただけで、幾つも記憶が蘇った。

「今って……何年ですか?」

さっきの女の子達は2026年だと言っていた。

「2026年で、令和8年。今日は3月29日」

男性は、わたしが手にしたままでいたスマホで今日の日付を見せてくれた。
そこにははっきりと「2026年3月29日」と表示されている。


こんなの、たちの悪いイタズラか……夢――
夢を見ているだけ。


今は西暦2018年で平成30年。今日は4月3日。

お母さんのお葬式があった日だから間違いない。